月刊名探偵コナン新聞【第二号 SIDE BLACK】

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青山剛昌先生 作者インタビュー 2

灰原のセリフが俺の本音

灰原がポツリつぶやくセリフは印象深く、実に詩的です

青山:「俺しか考える人がいないので、苦労しますね。書きやすいキャラではあるかな、地でいけますから。コナンじゃ言えないようなセリフを灰原に言わせる、というのが俺の本音というか。熊をかばって人を殺しちゃったヤツに、灰原がサラッと「動物愛護も、そこまでくるとおしまいよ」みたいなことを言うんですが、コナンが言うとトゲが立つじゃないですか。不謹慎なことをサラッと言えるから、灰原と小五郎は貴重です。」

小五郎は、あれだけおちゃらけてバカにされても格好いい部分もあるキャラですね

青山:「一般的なダメ探偵をイメージしました。ミスリード役ですが、実は小五郎は大事ですよ。格好つけるところはつけないと。一番、書きやすいかな、俺が思ってるエッチなこととか書きやすい。一番キャラが近いのは、小五郎かもしれない。」

灰原と小五郎のセリフに、先生の本音が隠れていると

青山:「そうですね。2人は書きやすいです。」

「月刊BLT 6月号【2012】」でも灰原が代弁者と語っています。「SDB50」では、コナンも自分にとっての代弁者とも回答。

初期の頃の伏線や意味深なセリフは灰原の発言によるものが多いですね。コナンがドヤ顔で言うとやたら偉そうに見えてしまうので、あんまり権限を与えすぎるとさすがに嫌われるかも(笑)

基本的にコナンが物語り全体を見通す人。灰原がコナンの知らない重要な伏線を呟いたり、コナンのフォローをしたりする人。小五郎は作者の地を呟く人、それでたまにいいことを言ったりといった印象。

試せるもの殆ど全部試す

トリックはどのように考えるのですか

青山:「つらいですね。毎回、大変だよね。アイデアは編集担当が持ってくる時もあります。打ち合わせに入る時「最近、面白いものを見た?小説読んだ?使えそうなのある?」って聞いて、面白そうなのは使います。もちろん、全然変えちゃいますけど。そこからいろいろな人に聞いたりもします。弟が医者なので、死亡推定時刻、死後硬直、死斑がどれくらいで出るとかは聞きますけど、おおもとを絞り出すのが大変です。」

実際にトリックは試してみるんですか

青山:「試せるやつは、ほとんど全部、試します。昔、留守電がテープレコーダーだったころ、テープが回収されるのも試しましたし、この間はトマトが塩で浮くやつも試しました。どれくらいの塩で浮かぶのかと、浮くのには、いっぱい塩を入れないといけない、どうしよう、と思って、最初から浮くか沈むかのギリギリのところまで塩を入れておけば、パッパと振っただけで、すぐに浮かぶ。これでいいや、と。」

試しすぎて実害を被ったことは

青山:「あったかも知れないですね。」

物語りもバリエーションが豊富ですが、リアルに起きている事件などを参考にしたりしますか

青山:「リアルに起きている事件は、逆に参考にしませんね。不謹慎じゃないですか。バスジャック事件を描いた何週間か後に、実際に事件が起きてるんですよ。「ヤバイな。『名探偵コナン』終わるかな」と思いました。過去に起きた事件は使うかもしれない。「3億円事件」みたいなやつは。でも、現在進行中だったり、起きたばっかりのは参考にしない。ちゃかしてるみたいで、嫌じゃないですか。」

ワールドトレードセンターの時だっけ?何かで以前ちょっと問題になったことがあったような。まぁ映画が先ですが。

日常編は簡単に変更ができるけど、映画とかは危うい部分もあるのかもしれないですね。公開前に大規模な事件とか事故とかあったら大変。

トリックを試している件については、「ダ・ヴィンチ【2014年 05月号】」でも語っています。

トリックと物語、どちらを先に考えますか

青山:「間違いなくトリック。トリックに合わせて物語を。難しいのから考えるんですよ。トリックは半日とか、6時間くらい。早いと3時間くらいだけど、1日やってもできないこともあった。「ちょっと寝るから待ってて」と、1時間半くらい寝かせてもらう時もあります。」

20年間で最も会心のトリックは

青山:「何ですか?と逆に聞いてみたいです。月と太陽の暗号は、シャーロック・ホームズの「踊る人形」の秘密から。あれって、自分でも考えられるじゃないですか。最初に読んだのがホームズの「踊る人形」でした。すごい興奮して、感動した。子供の時だったから、英語は読めないじゃないですか。なのに、すごく面白くて、この人形はL、と書いても、子供ではピンとこないんだけど、辞書を引きながら、小学校2~3年でした。ホームズが格好いい、あれをいつかやりたい、と思って。」

警察・捜査関係の専門知識や情報はどこに聞くのですか

青山:「警視庁に聞いたこともありますよ。意外に教えてくれますよね、いろいろ。」

毎回半日程度で考えてるってすごい。慣れれば頭の引き出しにあるテンプレをいじる程度みたいなもんなんですかねー。

「月と星と太陽」の話は、「SDB60」では今までで最も大変だったと回答しています。

トリックというか、個人的に長野県警や小五郎が悩みに悩んで、ある瞬間にハッと気付く瞬間が好きです。

コナンとか「名探偵」の人達は悩むことはあるけれど、基本的にそれは一時的なことで事件解決に必要な能力や知識は最初から兼ね備えている。

凡人が何度も現場に足を運んで、行き詰まりながらも最後の最後に真相に辿り着く。これに達成感を感じます。読者と一緒の目線で考えるので、感情移入して一緒に推理できるというか。

「推理は足で」と英理に励まされてがんばる小五郎は応援したくなります。弱い主人公が自分より強い敵に立ち向かい成長していくのが日本の少年漫画。

コナンは最初からスーパーマンで、そこにいればほっておいても1人で勝手に事件解決してしまう。もしかしたら、自分は名探偵コナン向いていないのかもしれない(笑)「名探偵小五郎」やっぱりみたい!

キッドは「ずるいキャラ」

怪盗キッドも大変な人気キャラです。誕生のいきさつと、今後の展開を教えてください。コナンと黒ずくめの組織の戦いにからんだりするのですか

青山:「もともと「マジック怪斗」という原作があります。アルセーヌ・ルパンが好きで、ルパン三世も好きなので、この前、ベルツリー急行列車編(「漆黒の特急=78巻収録」)でからませましたけど、今後はあまりないような気がします。怪盗キッドって、ものすごくずるいキャラなんですよ。変装はできるし、声も変えられるし。敵ならいいですけど、味方だとずるすぎる。女性ファンはすごく多いですけど、あまり出さないようにはします(苦笑)」

キャラがある程度定着すると、ひとりでに動くという作家も多いですね

青山:「それはありますね。勝ってにパーっとする時は、勝手に動いてくれる。映画の時は「そんなことは言わないよ」的なことを言って、全部直す、そんな作業ばかりしています(苦笑)。末尾の言葉も気になるので、全部直しますよ。」

キッド登場のきっかけの話は「名探偵コナン VS 怪盗キッド 完全版」で語られています。「少年サンデー33号特別付録」でもちょこっと。

組織編には絡まない件は、「話そうDAY【2013】」でも言及したようです。ミステリートレインの件は、やっぱりあれはちょっとズルかったんだ(笑)

コナンのアニメは「原作に忠実」というスタンスを徹底しています

青山:「(作品が)長いですから、違うことをしちゃうとつじつまが合わなくなっちゃうから、それに俺が「原作通りにやってくれ」と言いましたから。」

この辺の話は「コナンドリル」で詳しく語られています。(過去の失敗談とかも)

映画作りの時は、かなり深くかかわると聞きました

青山:「深くかかわりますね。漫画じゃできない、スケールのデカい話しを映画でやる感じですね。」

「ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE」の最後でも、4月公開の劇場版第18作「異次元の狙撃手」につながる仕掛けのアイデアを出されたと聞きました

青山:「そうです。ツリーが舞台なんですが、スカイツリーは名前を使わせてくれなかったんです。「人が死ぬのはどうでしょう?」と言われて、「確かにそうですね」と(苦笑)。」

映画にすると、テレビと違うものになることも少なくないですが、テレビシリーズをしっかりスケールアップさせています

青山:「どちらも原作を邪魔しないようにしていますね。」

昨年コナンシリーズが、映画プロデューサーに贈られる藤本賞の特別賞を受賞しました。作り手が評価される賞を受賞し、アニメを越えた映画の一大コンテンツとして認められた感があります

青山:「すごいなと思いますね。」

映画やテレビアニメについても、人ごとではいられないですか

青山:「やるからには、という感じです。1回、ほぼお任せして作ってもらったドラマがあったんですが、これはダメだ、と思っちゃいまして。脚本を全部直しましたよ。あれこそ、漫画家がやることかと思いました。大変で、漫画のネームが上がった後に、脚本を読んで、全部チェックして。そういう仕事、いっぱい来るよね。」

ダメだったドラマ気になる(笑)

最新作の「異次元」は去年の記録を間違いなく超えそうですね。

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