ジン・ウオッカ絡み
巻 | タイトル | メンバー | 内容 |
---|---|---|---|
1 | ジェットコースター殺人事件 | ジン、ウオッカ | 資金調達 |
2 | 奇妙な人捜し人事件 | ジン、ウオッカ | 資金調達、邪魔者粛清 |
4 | 新幹線大爆破事件 | ジン、ウオッカ | 資金調達 |
12 | ゲーム会社殺人事件 | テキーラ(ウオッカ) | PGのリスト取り引き |
18 | 大学教授殺人事件 | ジン・ウオッカ | データの抹消 |
24 | 黒の組織との再会 | ジン、ウオッカ、ピスコ、ベルモット | 呑口議員の暗殺、ピスコ、シェリーの抹殺 |
28 | そして人魚はいなくなった | ジン、ウオッカ、シェリー | 美国島を訪れる(過去) |
37 | 残された声なき証言 | ジン、ウオッカ、テキーラ、高飛車な女(ベルモット) | 板倉のソフト発注と回収(過去含む) |
48 | ブラックインパクト | ジン、ウオッカ、ベルモット、キール、キャンティ、コルン | 土門議員候補の暗殺 |
58 | 赤と黒のクラッシュ | ジン、ウオッカ、ベルモット、キール、キャンティ、コルン、楠田陸道 | キールの奪還、赤井秀一の抹殺 |
67 | 赤く揺れる照準 など | ジン、ウオッカ、ベルモット、キール、キャンティ、コルン、バーボン | 赤井秀一の生死確認 |
78 | ミステリートレイン | ジン、ウオッカ、ベルモット、バーボン | シェリーの抹殺 |
*ミステリートレイン以降は後述
解説
組織の「実行部隊」とも言えるのがジンとウオッカで、ジンはリーダー役。ウオッカはパシリ役のようなもの。ただし、本来はコードネーム付きに上下関係はなく同格、たまたまジンが指揮を取っているだけらしい。(少年サンデー33号特別付録)
まぁ、ウオッカはジンのことを「兄貴」と呼んでいるように、組織図としては同じ扱いでも、この二人の間では師弟のような関係があると思われる。
組織は「世界中にあるかも」と言われているけれど(SDB30など)、作中で登場できるキャラの数は限られ、ベルモットの単独行動を除けば主な組織活動のほとんどに、このジンやウオッカが何らかの形で絡んでくる。
そのため、ジンやウオッカの行動を見れば組織が今何をしようとしているのか、どんなポリシーで動いているのか等が見えてくる。
組織の行動パターンについて ─
灰原曰く組織のプロジェクトは半世紀程前から始まっているが、例えば30年前は薬の開発で、10年前は~などと段階を踏んで進行しているわけではなく、現在軸でも薬は完成せずに研究は継続中。金はなくなり次第必要だし、裏切り者が出ればその度に抹殺しなければならない。
そうなれば、組織としてやるべきことはある程度決まっていても、それらは同時進行、順不同で動いていると考えられるのだけれど、必ずしもそうでなかったりする。
これは漫画の都合だろうが、プログラマーのリスト入手や板倉卓へ発注したソフトの回収は現在軸で行われ、50年という歳月を考えれば一気に動きが加速しているように思える。
またそれだけでなく、現在軸での組織の行動もある程度順序があったりする。ジンとウオッカが登場した1巻の「ジェットコースター殺人事件」では拳銃密輸の社長からアタッシュケース一杯の札束を強請。
2巻の「奇妙な人捜し人事件」では宮野明美に10億円強奪の命令を出し(回収失敗)、コードネームが判明した4巻の「新幹線大爆破事件」では取り引きで4億円もの大金を手にしている。
これは物語の始まりで、マフィア的なイメージを演出する行動としては王道だから、長期連載画決まってから少し変わった動きをするようになった──
というのもあるだろうが、この資金集め的な組織の行動はこれでパタリと止まり、以後は別の目的のために動いている。50巻を過ぎようが70巻を過ぎようが、また適当な社長にいちゃもんでも付けて金を脅し取る事件があってもいいはず。
後付だとしても、もしかしたら組織はきまぐれで活動しているのではなくて、きちんと計画があって動いているということが意識して描かれているのかもしれない。
詳細
資金・資材集め ─
組織が活動するためには何をするにしてもまず金。だから最初に資金調達が行われるが、間の10億円強奪事件は、もう一つ宮野明美の粛清という目的もあった。
これは組織の秘密保持が目的。キール編になってわかることであるが、赤井秀一を組織に招いた明美が、これから先も連絡を取る恐れがある可能性があると考えての始末であった。
そして、テキーラのプログラマー集めが始まる。このリストは大金で取り引きをしようとしたもので、当然プログラマーもお金で雇うことになるはず。手段として集めたお金であるが、今度はそれを使い必要な人材や物集めにかかっている。
また、組織が絶対的なポリシーとしているのが組織の情報が外部に漏れることを完全にシャットアウトすることであるが、そのスタンスは組織の取り引き場所にしていた「カクテル」を強行的な手段で爆破したことでも表れている。
組織は目的達成のために「資金集め」⇒「物集め」と動き、同時平行で組織の運営を安定させるために情報漏洩を防ぐことに力を入れている。
裏切り者の粛清 ─
その後、18巻で灰原が加入。シェリーの口から研究所などの情報が漏れること恐れた組織は間髪入れず灰原が関わった研究施設などを全て焼き払ってしまう。
灰原登場後、しばらくは明美を殺害した動機や「カクテル」を爆破したような、組織の絶対的な秘密主義のポリシーを中心に描かれる。
「大学教授殺人事件」では、宮野明美が誤って組織の情報が入ったフロッピーを教授に送ったことが発覚するが、その後始末をしようとウオッカが動いていた。結局、教授は日常事件に巻き込まれて殺害され、回収に失敗たフロッピーも「ナイトバロン」の仕掛けにより情報が漏れることはなかったが…
続く24巻の「黒の組織との再会」では収賄疑惑で新聞紙上をにぎわしている呑口議員の暗殺が行われ、記者に決定的な場面を撮られるというヘマをしたピスコも、あの方に長年仕えていたにも関わらず殺害される。
この話では「APTX4869を使う」とにおわせれば必ずやってくると読まれていたシェリーの抹殺も同時に計画されており、殺害、またはその予定だった灰原含む三人はみな組織の情報を守るためという名目の元に行われている。
この裏切り者の抹殺は別に「この時期だから」というわけではなく必要に応じて行われているだけだが、読者向けにこれが組織のやり方だということを教えるためにここで描かれている。最初はお金集めしてる悪い奴としか描かれていなかったけど、何やらそんな単純な奴らではないな…と。
上記のことは、組織の目的達成のために秘密保持が絶対条件であることも意味している。だから組織にとって重要であった灰原でさえ、その命は保障されていない。
極端とも思える行動は漫画として面白くするためでもあり、後に明らかになる「石橋を叩いて壊すほど慎重居士」なボスの影響もあるであろうが、少なくとも秘密を守らなければこれまでの努力が水の泡になってしまうということ。表沙汰になれば実現できない計画を立てている可能性がある。
例えば、単に不老薬を研究するだけなら、アンチエイジングの研究をしている研究所やら化粧品会社でも立ち上げて表で活動すればいい。まぁ、資金の出所とか捜査されたらまずいけど、組織が秘密を守るのは裏で犯罪をしているからではなくて、プロジェクトそのものを秘密にするためだと思われる。
目的関連 ─
コナン:(わかっているのは奴らが暗殺を繰り返しながら大金を集め、妙な薬を作り、有能なコンピュータプログラマーを集めようとしている事・・・一体何のために・・・?)(まさか金かけてどえらいゲームを作ろうってんじゃあるめーし・・・) File:377
秘密保持のスタンスは組織の活動を安定運用するためなので目的とは直接関係はしないが、コナンはこれまでの組織の行動「暗殺を繰り返しながら大金を集め」「妙な薬を作り」「有能なコンピュータプログラマーを集めようとしている」ことを回想しまとめている。「大金を集め」もその一つ。
そして、全く脈絡のなさそうなこれらの行動から、「組織は何をしようとしているのか?」と問題提起をして、さらにその具体的なところに踏み込んでいく。
ただ、以降の内容は計画の進行過程を意識してというよりは、読者向けにヒント出すタイミングを考えた上での順序だろうか。そのため、組織の行動としては過去編も含んでいる。
まず28巻の「そして人魚はいなくなった」では、ジンとウオッカ(「黒澤陣」についてはラブ・コナン)、宮野志保が何らかの目的で美国島へやって来ていたことがわかる。
また、37巻の「残された声なき証言」では2年前から板倉卓にソフト開発の依頼をしていたことがわかり、現在軸がその受け取りとなる。これはどちらも「プログラマーのリスト」と同じように組織の目的に繋がる伏線。
この二つが語られたのが、ジン以上に組織の秘密を握っていると考えられるベルモットが登場し、その伏線が張られたベルモット編であることも重要。ベルモットだけでなく、ジン・ウオッカの行動も組織の目的絡みとなっている。
最初に目的をやって途中から資金集めを描いたら支離滅裂な進行になってしまうので、組織の行動がある程度段階を踏んで進んでいるのは当然ではあるかもしれない。
変化球 ─
キール編に入ると、組織はこれまでになかった行動を取り始める。それは土門康輝議員候補の暗殺計画。24巻でも呑口議員が殺害されたが、彼は元々組織の息がかかった人間であり、理由は口封じであった。
土門の場合、「父親が有名な元官僚で政界に顔が利き、カリスマ性が高く、正義感の塊みたいな人だから」「すでに未来の首相候補とまで噂されている」という理由。
裏切り者の抹殺や口封じは「守り」の行動であるが、事前に将来有望な議員候補の芽を摘もうとする土門の暗殺計画は「攻め」の行動。
ただし、この目的はあくまでFBIの予測でしかない。確かに政界に顔が利く人間の正義感が強ければ組織は仕事がやり難くなるかもしれない。しかし、単純に「犯罪者への風当たりが強くなるから」という理由だけの行動としてはちょっと回りくどい。
組織が日々正義感の強い人間が政治や企業の重役に就くことを邪魔するために暗殺に勤しんでいる。これはその一例を描いただけ、というのならわからないでもないが。それにしてはかなり大規模な作戦。
組織は目的達成の準備を着々と進め、既に攻めに転じているのだからもう少し具体的な理由も考えられる。これまでの組織の行動は目的達成に直接繋がるもの、必要なものであった。
*「サンデー非科学研究所」にて、当初は人気俳優の千頭順司が狙われる予定だったとのこと。ただし、この話は誰が狙われるかではなく、なぜ狙われるのか(組織が動いた目的)が重要なので、その点に変更はないと考えられる。でないと、組織の行動に一貫性がなってしまうため。
詳細は↓
組織に狙われたお偉いさん(政治家):呑口重彦議員と土門康輝候補
天敵の抹殺 ─
その後の話。「赤と黒のクラッシュ」はFBIに捕らわれたキールを奪還に動き、そのキールを取り戻した後は、キールが裏切り者でないかを確かめるついでに赤井秀一の抹殺を命じる。
キール奪還とキールへの疑いはこれまで通り機密情報を守るための行動。そして、赤井はこれまで何度も組織の前に立ちふさがり、あの方からは「シルバーブレット」と恐れられている人間。
1年前にもNYでベルモットが赤井殺害を狙い失敗しているが、これは組織の天敵を排除するという目的。赤井さえ始末できれば、もう自分達を止めることができる人間はいなくなる、というところであろうか。
まぁ、ジンはそこまで恐れていないようだし、コナンもいる。そもそも、赤井抹殺に失敗しているのだけれど。
こうした目的は通常、「あとはあいつさえ始末できれば」ということなので、「締め」に行われる。これで一通り組織の実態や目的に関する紹介は終えたのかもしれない。(あとは核心に近づくようなものだけ)そのため、この後特に目新しい動きはない。
67巻の「赤く揺れる照準~」はバーボンの自作自演にジンやウオッカが踊らされただけであり、それも赤井秀一の生死の確認でしかない。(是が非でも消しておく必要がある)78巻のミステリートレインは殺り残した「裏切り者シェリーの抹殺」であって、これも既出。
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