サンデー File:972-974

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日常編について

待ちに待った過去編ということで非常に情報量が多いのだけれども、日常編も色々考えると面白い話だったのでちょっとだけ感想。

最近は三話構成の割に組織編に絡む話が多かったりで、日常編は物足りなさを感じる回もあるのは否めず。今回もそれに漏れず、どころか第一話はほぼ赤井一家の団欒という。

推理も犯人の時計が展示に使われる10:10分を指していることと、盗品の時計も同じ時刻で一致しているという随分あっさり。一見単純に思えるのだけれど、本当にそんなに簡単だったのか── というのも、時計の針が見えるように描かれていない(笑)

犯人は時計を盗んでいる。三人の容疑者の時計をわざとらしく描いている。優作が写真を見ただけで、ノーヒントで犯人の見当を付けた。これらのことからも、「時計にヒントがあるのでは?」と思い何度じっくり見ても時間までは確定できず。

実は秀吉の婚姻届の時のように、スキャンして引き伸ばせば何とか確認できたりするのだけれど、あの時は内容が内容だけに「拡大すれば見えちゃうんじゃない?」という好奇心もあってのこと。日常編の推理に必要な根拠を探させるのにそこまで要求するものなのか。

視力のいい人は見えたのかもしれないけれど、やっぱり拡大してようやく判別ができるくらいな気も。ただ、あまりはっきり描きすぎても、今のネット時代「10時10分」と検索するだけでトップに「広告で10時10分付近を表示~」などと出てきてしまう。

つまり時計の針がどこを指しているかがわかった時点でもうCase Closed。さらに盗品の時計と犯人の時計の時刻が一緒ということまで気づいてしまえば、「10時10分」がわからなくても答え。だから簡単に見えてはいけないとも言える。

見えたら答え。でも見えないと答えが出せない。それなら拡大すれば見えるというのは間違ってはいないかも(笑)でもちょっとそれはアンフェアな。まぁ、これは拡大すれば見える程度に計算したと言うよりは、紙の荒いサンデー本誌になった時にどのくらいなら見えるのかという想定が難しいせいかもしれない。もしかしたら、電子書籍のほうが見やすかったりするのかも。拡大も容易だし。

名探偵コナンは漫画という媒体だけあって、文字しかないノベライズや一瞬で流れてしまうアニメーションよりも画系の伏線にはこだわりがあり、「こんな細かいところまで!」というのはまれにある。それでもちゃんと見えるし、それだけで推理させるというよりは、答えがわかった後に見直すとちゃんと描き分けてるというサプライズみたいな要素も強い。

優作が一目で見抜いたシーンがあるいみひっかけでもあったかもしれない。時計に何かある⇒「拡大したらもう答え」。時計に何かある⇒「じっくり見ても針の位置までは特定できないので、時刻以外に意味が?」と考えると嵌ってしまう。

優作のヒントからすれば、この時計の伏線をメインにしたかったのかもしれないけれど、前述したようにこれに気づけないと推理できないわけではなく、ちゃんと別の方法が用意してある。

実際、赤井は時計の証拠なしで犯人を絞り込んだし、時計の示す時間で犯人を特定したのは新一のほう。赤井が買い物した人物三人に容疑者を絞りこんだ話をメインに進んでいるし、優作が犯人を特定したのは二話目のラストということもあり、時刻がわかればそれだけで犯人が特定できるというのはどちらかというとボーナスではないかと。

二つのルート

A:優作/新一(時計の時刻で犯人を特定)
B:赤井(買い物した内容で犯人を特定)

Aルートで推理した場合は知ってさえいれば考えずに済むのでそれまでなのだけれど、Bルートはあることに気づかないと迷走してしまう。

まず最初に違和感を感じるのが、彼女が水着なのに福水が服のままボートに乗っていることなのだけれど、「強盗犯は水着を用意しているわけはないので水着を買った福水が犯人です」ではそのまま。しかも、その彼女に電話をして裏を取れば、すぐに真偽がわかってしまうという。

ただ、今回はこれだけの理由では福水を切れず。というのも、北森の証言もおかしいから。「タクシーで来た」というのは付近のタクシー会社に問い合わせてそういう客を乗せた運転手がいるかどうか調べればわかるし、海で泳いでそのまま濡れた水着で見つけた男の車に乗り込むつもりだったのか… と。

二人組みの強盗犯で一人がいかにもならず者っぽい男だとすれば、もう一人も似たような男を連想しがちだけれど、わざわざ犯人の性別は断定できないとして女が出てきたらそいつが犯人というメタ的な推理は例外もあるので過信はできないとして、まあ怪しい。

そして三人目の本田ではなくて大網。時計の時刻が判別できない前提で、時計が伏線になるのなら「ニューヨークタイム」くらいしかヒントになるような箇所がない。盗んだ時計が動いていなかった。遅れていたなどの理由をごまかす意図があったとしても、そんなことをするなら捨ててしまえばいい。この広い海なら見つかりっこない。

調子の乗って両腕に付けてたら、後から気づいたのでとっさにごまかした。そもそも海に飛び込んだ時点で時計は壊れているはずだけど、でも大網は時計の時刻を確認させているので時計は正常ではないか。防水性だったから故障はしていなかったのでは… などと考えていくと、もうわけがわからないことになってくる。

ここで一度原点に戻ると、赤井が買い物客が海から出ようとするのを引き止めるようにしたのは、強盗犯がずぶぬれの格好で歩いていたら不自然だからという理由。

犯人はどこかで服を調達して海水浴客を装っているのだけれど、水着を購入したのは福水しかいない。もし他の二人が犯人だったとすれば、どのようにして水着を手にいれたのか。

ここがBルートで最も重要なところ。北森はビーチサンダルを購入して水着は海水浴客から隙を見て盗んだ。同じように、大網もアロハだけを購入して海パンは盗んだ──

大網は実際服を盗まれているのだから、窃盗という可能せいも当然出てきてもおかしくないのだけれど、これをありにすると、全て窃盗で調達して既に海水浴場から逃げている容疑者がいる可能性が出てきてしまう。

大網は海パンを盗むくらいならアロハを盗むほうがはるかに簡単な気はするけれど。水着は海水浴客が着替える前か、帰宅直前に一瞬目を離した隙くらいしかない。アロハは海で泳いでいる客が軽い荷物と一緒に置きっ放しにしているケースはありえる。同じように、靴を置いていくことはあっても、海辺は通常ビーチサンダルは履いて歩く。

とまあ、漫画の進行上窃盗を入れることはできないので、犯人は最初から持っていた物と購入した物だけで今の服装になっているということ。

これを前提に考えると、海に落ちることを想定していなかった強盗犯が必要なものは水着とビーチサンダルの二つ。水着はもちろん、ビーチサンダルで強盗をする人はいない。びしょびしょの靴を履いていたらおかしいので、靴の調達は必須。

福水の履いている靴がわからないのだけれど、落ちる回想の靴はビーチサンダルっぽいのと、水着とTシャツは購入しているのに、最も安いビーチサンダルは購入していない、ビチョビチョの靴を履いたままということも考えにくいことから、履いているのはビーチサンダルと考えられる。

しかし、この二つをセットで買った人はいない。なので、何らかのアイテムを元から所持しているアイテムで代用している(強盗の際に水着やビーチサンダルを代用した)ということ。ただし、犯人が何を所持していたか、どのように強盗をしたかが明らかにされていないので、そこまで大掛かりな作りこみはできない。海に落ちたのはイレギュラーなので、あくまで見せかけの応急処置が限界。

「犯人は何のアイテムを何で代用したのでしょう」と言うのがこの推理の趣旨。

福水:ビーチサンダル
北森:水着(女性用)
大網:水着(海パン)、ビーチサンダル

偽装が必要な物を整理すると、大網は海パンとビーチサンダルで二つになってしまうのと、福水のビーチサンダルと被ってしまうので、大網が犯人なら福水も可能になってしまう。前回の話で靴を手作りしたけれど、準備が必要で実用性もない。ビーチサンダルの代用は難しいので、一人だけビーチサンダルを買った北森が消去法で残る。

大網は海パンを目出し帽にしていたため、被っていた帽子を~とかもちょっと考えてみたけれど(笑)北森がスカーフをしていたことはわからないので想像になってしまうのだけれど、透けているのが水着ではなくて下着のようにも見えるので、何かを巻いてそう見せかけたのかなというのは判断できる。

赤井は、犯人は札が濡れて小銭しか使えなかったために、Tシャツと水着二つを買った福水や、三千円もするアロハを買った大網ではなくて、最も安いビーチサンダルしか買えなかった北森と推理しているけれど、これに気づかなくともおおよその絞り込みは可能。

こうやって整理すれば簡単なようにも思えるけれど、あれこれ考えてしまいがちなので、単純なように思えてそうでもないような。「10:10分」のような知識がなくても論理だけで解けるし、何が問われているのか、問題の本質を見抜くタイプの良問。

新一/服部や敢助/高明のように、コンビによる推理は大抵途中で二人が違う推理ミスをしつつも、最終的には合意に至るパターンがだけれども、今回は「真実はいつも一つ!」でありながら、そこへ至るまでの経路は一つではないという工夫。

この過去編よりもっと前の新一BOYですら、新一=天才として犯人を見抜かせたような設定なので、おそらく、今回の新一にもきっちり正解を出させるようにするため。

しかし、赤井のように論理で導くにはまだ早いし、尺も足りないということで(笑)それで一発逆転ルートも作ったのではないかと。これは、優作が瞬時に犯人を特定するという天才振りを見せるのにも役に立っている。

どちらかというと、非道なコナン/優作ルートで推理した人が多かったかも。個人的にはWルートの想定をしていなかったので、赤井ルートで考え時計の伏線が最後まで浮いてしまいモヤモヤ。コナンルートのほうが答えは確定できるので迷いはないかも。

もちろん、読者には赤井と優作と違い両方のヒントが与えられているのでどちらも合わせて考えることができるのだけれど、両方の辻褄を合わせるほうが難しいので逆に難易度が上がってしまうような。

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更新日:2016-10-8
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