赤井が灰原を見て振り返る
黒の組織との接触
赤井:(まさかな・・・)
灰原:(え?)
コナン:「ん?」「どうした?」
灰原:(・・・いや・・・)(なんでもないわ・・・) File:383
38巻、赤井と灰原の初対面。赤井は灰原とすれ違うと、「まさかな」と何かに気づいたように振り返る。そして、灰原も「え?」と反応する。
灰原に関しては、赤井が完全に通り過ぎてからじっと見られていることで反応しているので、赤井から組織臭を感じたのだと思われる。33巻の「シカゴから来た男」でも感じていた。
灰原の回想:(赤井:そんな顔をするな・・・ 命にかえても守ってやる・・・)
灰原:「諸星大・・・ 組織を裏切った・・・」「お姉ちゃんの恋人・・・」 File:802
後にはっきりすることであるが、元々、灰原(宮野志保)と赤井は面識があったので、灰原は赤井の顔を知っている。けれども、灰原は赤井の顔を見て反応したわけではないので、この時はまだ「お姉ちゃんの恋人?」と気づいたわけではないと思われる。
まぁ、灰原は赤井の顔を見れたのかわからないけれど、組織臭を感じて振り返ったら見覚えのある顔が… というのもありえなくはないか。
初接触は29巻の「謎めいた乗客」
赤井は初対面と言っても、赤井初登場のバスジャックの話でコナン・灰原と乗り合わせているし、仲間のジョディも同乗していた。その時点で、ジョディは「バトルゲームの罠」でコナンと対面済み。ただ、バスジャック事件でのFBIのターゲットは新出に変装したベルモットと、その仲間のジンが現れるのを待っていた。
赤井:「標的は現れず・・・」「後日改めて調査を再開する・・・」「以上・・・」 File:289
FBIはバスジャックの時点で新出=ベルモットには気づいている。まさかボスが出て来るとは思っていないだろうし、後々登場するラムについては赤井すらあまり知らない上に、まだFBIの警戒ターゲットではない。
ジェイムズ:「しかし驚いたよ・・・」「君があの長髪をバッサリ切るとは・・・」
赤井:「ゲン直しですよ・・・」「恋人にふられっぱなしなもんでね・・・」
ジェイムズ:「それで?わざわざ私を呼び寄せたのだから・・・」「その恋人とはよりを戻せそうなのか?」
赤井:「ええ・・・後悔させてやりますよ・・・」「私をふった事を・・・」「血の涙でね・・・」 File:327
赤井:「やっと会えたな・・・」「愛しい愛しい・・・」「宿敵(こいびと)さん?」 File:504
この「恋人」が誰なのかは、49巻の「ブラックインパクト」で回収されている。赤井はジンを追いかけてアメリカから日本に来た。そして、ジンが日本に潜伏していることを掴んだのか、ジェイムズもアメリカから呼び寄せている。赤井が追いかけている人物、そしてFBIが標的としているのはジン。ラムが動き出したのを知ったのは緋色シリーズの終わりにキールの警告があっての事なので、さすがにここに当てはめるのは厳しい。
この段階では赤井もジェイムズも敵側とミスリードしているので、バスジャックの「標的」は宮野志保だったが、幼児化していることに気づかずに見過ごしたと思わせるよう読者を誘っている。学園祭の話で、ジョディが「容姿を変えて堂々と学校に通ってるみたい」と報告している対象が工藤新一と思わせるミスリード。バスジャックではベルモットはモノローグでコナンに語りかけるので、コナンの正体には気づいているため、この時の狙いは灰原というミスリード。
それで、バスジャックでのFBIの狙いはベルモットとジンなので、FBIはコナンと灰原をマークしていたわけではなくて、コナン一行と乗り合わせたのは偶然。ただ、33巻の「シカゴから来た男」では、ジェイムズはコナンの推理力を試したし、27巻の「バトルゲームの罠」でも、同じようにジョディはコナンの様子を観察していることから、コナンは初期段階から、ジェイムズとジョディそれぞれの初対面で既にマークされている。
二元ミステリーの段階
ジョディ:「ここからは質問!」「貴方が連れ出して殺そうとしていた写真の女性と瓜二つなこの女の子・・・・・・」「もちろん承認保護プログラムを要請するけど・・・」「本当にあの写真の女性なの?」
「まだあるわ!その写真の下に貼ってあった二枚の写真に書かれたCool guyとAngelの意味・・・」「あの男の子は確かに頭が切れるけど男じゃなくて子供よね・・・」 File:433
ジョディがコナンに目を付けたのは、新出先生に変装したベルモットの部屋に忍び込み、「Cool guy」と書かれたコナンの写真を見たから。ベルモットが所持していた写真には他に蘭とダーツの刺さった宮野志保の写真も含まれていた。なので、29巻のバスジャックの時点でベルモット=新出の狙いが宮野志保であることはFBIは知っていた。
当時は難しく考える必要はなかったが、しっかく区別しておかなければならないのは、FBIのジョディ、赤井、ジェイムズがそれぞれ宮野志保や幼児化の現象について異なる接点や認識があるということ(ジェイムズに関しては後述)。要は、FBIとしてベルモットが狙っているのが宮野志保で、その正体が幼い茶髪の少女である灰原であると気づきマークしたきっかけや段階と、個人的に灰原が面識のある宮野志保ではないかと疑ったきっかけや段階が必ずしも同じではない可能性がある。
二元ミステリーでは、ジョディは「本当にあの写真の女性なの?」と聞いていることから、宮野志保=灰原であると疑いは持っている。ただし確信はないのかもしれない。緋色シリーズでコナン=新一の大ヒントが出たにもかかわらず、ジョディは未だにコナンが新一であることに気づいていないことから、まだ組織の開発している薬のことにそこまで詳しくないのではと考えられる。(ジョディは学園祭で新一を見てしまったのが悪影響しているかも)これが、一般的なFBIの共通認識。
赤井:「それに、俺はまだその茶髪の少女と顔を合わせるわけにはいかないんでな・・・」 File:434
しかし、赤井は二元ミステリーで「その茶髪の少女と顔を合わせるわけにはいかない」と言っていることから、灰原が特別な思いのある宮野志保であることを確信している。
明美:(FBI?)(大君が?)
赤井:(ああ・・・明日、決着をつけに行く・・・)
明美:(アハハバカね!)(嘘つくならもっとマシな嘘ついてよね・・・)
赤井:(・・・・・・)
明美:(そんなんじゃ・・・)(全然驚か・・・)
赤井:(お前知ってたな?)(知っていてなぜ俺から離れない!?)(お前を利用していたんだぞ!!)
明美:(言わなきゃわかんない?) File:607
この理由は、キール編の最後「赤と黒のクラッシュ」で赤井と明美二人が交際関係にあったことで明かされる。つまり、ベルモット編で既に赤井と宮野明美の関係は考えられていたということ。
ベルモット編の終わりの「顔を合わせるわけにはいかない」という伏線の「何で?」が、キール編の終わりに「姉の交際相手なのに守ってやれなかったから」と、直接的な表現ではないが説明されている。
灰原:「初めてかしら・・・」「あなたと2人きりになるの・・・」
沖矢:「そーいえばそうでしたかね・・・」「警視庁の前で路駐するのも何ですから・・・」「彼を待つなら駐車場に移動して・・・ 車の中で待ちませんか?」
灰原:「そうしたいのなら無理やり連れ込めば?」
沖矢:「そんな無粋な真似はできませんよ・・・」(彼女との約束なんでね・・・) File:810
沖矢:「さすがに姉妹だな・・・」「行動が手に取るようにわかる・・・」「さぁ・・・来てもらおうか・・・」「こちらのエリアに・・・・」 File:821
バーボン編においては、沖矢に変装した赤井が工藤低で灰原の安全を見守る。その主な理由は、「彼女との約束」があるから。これは幼児化した「灰原哀」に関しての約束ではなくて宮野志保に関しての約束である限りは、灰原の正体が誰だかわかっていないとできないこと。
そして、ミステリートレインでは「さすが姉妹だな」と、赤井の交際相手であった姉の宮野明美と灰原を姉妹として比較している。これが、赤井が灰原=宮野志保と認識していることの確定でもある。
この前提で、一体FBI(ジョディ)と赤井はどの段階で、何がきっかけで宮野志保=灰原と気づいたのか──
上記を踏まえると
赤井:「しかし・・・」「よく似ている・・・」 File:419
赤井は描写があるので比較的わかり易い。前述した「まさかな」ですれ違った灰原に違和感。37巻で灰原に目を付けたその後、41巻の「東都現像所の秘密」ではFBIの仲間を連れて灰原を監視。その話の終わりには「よく似ている」と感じている。
赤井と宮野志保は面識があり、42巻の二元ミステリーでは灰原=宮野志保と確信しているのだから、灰原が宮野志保に似ているのは当然。バスジャックの時は灰原が監視のターゲットではなかったとは言え、その時は灰原には違和感を持っていない。まぁ、漫画の進行という理由もありそうだけれど。
37巻で初めて灰原の顔をちゃんと見たことでピンときた。そこから41巻の尾行と灰原への動きがあることから、赤井が灰原に特別な疑惑を持ったのはシンプルに37巻と言える。
一方でFBIについて。ジョディはバスジャックで灰原の顔を覗き込んだり、不思議そうな顔をしたりと何か違和感を持っているように描かれているが、ベルモットの追う宮野志保と同一人物であると疑いをかけているのかは定かではない。
ジョディの部屋にあった写真には、ベルモットが所持していたコナンや宮野志保、蘭の写真や学園祭の新一や新出先生の写真はあるが、灰原の写真は一枚もない。学園祭の時は灰原はコナンに変装していたために撮れるわけもないのだけれど、学園祭の後でも灰原の様子を監視するような動きはない。灰原に注目していたのなら、時期がいつであろうと赤井のように写真に撮るはず。
二元ミステリーのジョディは「あの写真の女性なの?」と同一人物であることを疑っているわけなので、灰原がベルモットの狙っている宮野志保にそっくりというだけではなくて、幼児化という突拍子もない説を想定するきちんとした理由があるはず。バスジャックで灰原を見ただけで何とかなるものではない。
41巻の「4台のポルシェ」~「二元ミステリー」まで行けばベルモットが灰原を連れ去ろうとしていることはわかるのだけれど、それでも、普通は灰原と宮野志保が同一人物だというところまでは考えない。
少なくとも、FBI側で灰原=宮野志保に気づいたのは赤井の37巻が最速だと思われ、薬の知識も宮野志保との面識もないジョディが二人は同一人物であると知ったのは、赤井かその報告を受けたジェイムズから多少の説明を受けたと考えられる。
また、FBIが事前に灰原=宮野志保を想定し、灰原の写真を撮っていたりしたのなら、赤井はその写真を見た段階で「まさかな」と気づくはず。すれ違った時に気づいたのは、その時初めて顔をはっきりと見たからと言える。
FBIと赤井が相変わらず連携なしで、それぞれが違う理由とタイミングで気づいた可能性もあるのだけれど、それだとやはり赤井を除くFBIが気づいた理由とタイミングがなくなってしまう。
また、これをきっかけに「東都現像所の秘密」で赤井がFBIのメンバー(あれはただのFBIの仲間なので気にしなくていいと言及)と灰原を張っていることから、ここからFBIとして灰原を監視していることになり、赤井はきちんとFBIに報告していることの裏づけにもなる。
ジョディの登場回 ─
26巻 | 命がけの復活帰ってきた新一 | 男子生徒との会話 |
---|---|---|
27巻 | バトルゲームの罠 | この時既に新出医院に潜入済み |
29巻 | 謎めいた乗客 | 灰原と対面するも、灰原を疑う根拠なし |
33巻 | 隠して急いで省略 | |
34巻 | 西の名探偵vs英語教師 | |
41巻 | 4台のポルシェ | ここでベルモットが灰原を狙っていることは推測可能 |
42巻 | コンビニの落とし穴 | |
42巻 | 二元ミステリー |
二元ミステリーまでのジョディと灰原の対面は「謎めいた乗客」と「4台のポルシェ」。ジョディがベルモットの狙っている宮野志保と灰原が同一人物であると考えるきっかけや理由がない。そもそも、ベルモットですら灰原=宮野志保を確定させたのは「4台のポルシェ」の終わり。
赤井の登場回 ─
29巻 | 謎めいた乗客 | バスに乗り合わせているが違和感なし |
---|---|---|
32巻 | 本庁の刑事恋物語4(後編) | |
32巻 | シカゴから来た男(後編) | 車ですれ違っているが、赤井が灰原に違和感を持ったのは後の話 |
33巻 | バレンタインの真実(推理編) | |
33巻 | 犯罪の忘れ形見 | |
33巻 | 隠して急いで省略(前編) | |
34巻 | 「中華街 雨のテジャビュ | |
34巻 | 工藤新一NYの事件 | |
37巻 | 残された声なき証言(後編) | |
37巻 | 黒の組織との接触(交渉編) | 灰原の顔を見て違和感 |
41巻 | 東都現像所の秘密(後編) | FBIの仲間と張りこみ |
41巻 | 4台のポルシェ | 阿笠低を盗聴 |
42巻 | 二元ミステリー |
37巻で灰原の正体に感づき、次の登場の41巻ではFBIの仲間と灰原を監視している。シンプルに考えれば、37巻で赤井が気づき、41巻までの間にFBIへ報告。それを機に灰原を監視対象とし、ジョディはFBIから同一人物説を聞いたと考えられる。
ちなみに、ジェイムズは唯一32巻の「シカゴから来た男」で灰原と対面しているが、あれだけで灰原が宮野志保の幼児化した姿だと見抜くのはどうかと。そうした描写もない。FBIが灰原を監視対象にしたのが、だいぶ開いて41巻。これが赤井が37巻で気づいた次の登場回であることから、やはり赤井の発見がきっかけではないかと思われる。
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