コナンと海老蔵【歌舞伎十八番ミステリー】まとめと感想

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まだ日が昇りきらない早朝。

・・・

歌舞伎座に着いた藪崎はエレベーターでロッカールームのある階に上がった。
「おはようさん」
薮崎の声に気づいた警備員の箕輪は、受付の暖簾から顔を出した。

・・・

ロッカールームに入っていく藪崎を見届けた箕輪は受付に座り、自分の仕事を片付け始めた。すると、「何だ!?」

ロッカールームから藪崎の叫ぶ声が聞こえてきて、驚いた箕輪はロッカールームに駆け込んだ。
「ど、どうしたんですか!?」

扉が開けられたロッカーの前に青ざめた顔で立ち尽くした薮崎は、「あ・・・・・・あ・・・・・・」とつぶやきながら箕輪を見た。

「ないんだ・・・・・・ここに入れておいた二表の面がなくなってる・・・・・・!!」
箕輪が驚いて藪崎のロッカーを見ると、鍵の差込口辺りにバールのような物でこじ開けられた跡が残っていた。 P45-46

早朝に藪崎が出勤すると、ロッカーがこじ開けられて中に入っていた二表の面が盗まれていた。先述したように、薮崎のロッカーだけがピンポイントで狙われていて、他は全く物色されていない。

犯人はロッカーも荒らせばカモフラージュと思わせることもできそうだけど、歌舞伎座に金目のものはないし、後に説明があるように、防犯カメラをすり抜けているので、それを行う意味はあまり意味はない。

ロッカーに名前があれば、藪崎が貴重品を保管していることさえ知っていれば藪崎のロッカーだけダイレクトで狙うこともできるかと思ったけど、アニメではなし。ノベライズにもその記載はない。

そうなると、薮崎のロッカーの位置まで把握している人間ということになるのだけれど、歌舞伎座の岩見や藪崎本人の自作自演はありえるとして、細尾が知っていたのは謎(笑)普通、スタッフのロッカーの位置までわからない。

守衛の人間はすぐ裏なので知っているとして、ただの警備の人間が細尾が二表の面を持って来たことや、それを薮崎に預けたことを知っているのかというのも微妙。この辺は説明がない。まぁ、絞れるのは、共犯でない限り面を盗んだのは、前日に登場した人間の誰かというところまで。

前編(3/5)

道路脇にワゴン車が停まっているのに気づいた新聞配違員は、手前にバイクを停めて三部ほど新聞を抱えた。ワゴン車の横を通り抜け、路地の奥にある民家の新聞受けに次々と新聞を入れていく。

配り終えた配達員はバイクに戻ろうと停めてある車の脇をもう一度通った。ここは駐車禁止なのにこんな朝早くから誰が停めているんだ・・・・・・と何気なくワゴン車の中をのぞく。
「あ・・・・・・・ああ・・・・・・」

・・・

「はい・・・・・・細尾さん、どうしたんですか、こんな早くに」

・・・

「今の電話、細尾さん・・・・・・?」
ただならぬ雰囲気に蘭もおそるおそるたずねると、窓から朝日を浴びた小五郎は「ああ」と振り返った。
「秘書の高橋さんが自殺した」 P46-47

朝早く、駐車禁止の場所にワゴンが停まっていた。新聞配達員が中で人が死んでいるのを最初に見つける。その後、細尾から小五郎に事件についての知らせが入る。

「毛利君」
ブルーシートの前で細尾と話をしていた目暮は、規制線を越えて入ってきた小五郎に気づいた。
「私が来てもらったんです」

・・・

「毛利さん』
「聞いたぞ。自殺とも言い切れんとは、何かあんのか?」
「これです」

・・・

「エンジンをかけたらヒモが巻き取られて首が絞まる・・・・・・秘書の高橋さんが自殺した・・・・・・」
「すぐに絞まるわけじゃなかったみたいです」
「え?」
「ラジエーターの電動ファンはエンジンがかかってもすぐには動きません」

・・・

(ファンが回るまでには時間がかかる・・・・・・なぜだ。なぜ、わざわざ・・・・・・恐怖心からか
.....)
そこまで推理を巡らせて、(いや、違う!)と頭の中で即座に否定した。
「殺しだ!」
コナンが結論を出すのと同時に、小五郎が叫んだ。高木も「やっぱり・・・・・・」と小五郎を見る。
「自殺するのにタイムラグはいらねーだろ」
車にもたれて腕を組んでいたコナンは、小五郎の言葉に小さくうなずいた。
(ときどき意見が合っちゃうんだよな・・・・・・)

「何にしろ死因を調べてからだ。ヘタをすりゃ胃の中から変な物が出るかもしれねぇ」
小五郎が言うと、高木は驚いて眉をひそめた。「絞殺以外ってことですか?」
コナンは開かれた後部座席のスライドドアから助手席を見た。すると、助手席のシートに見覚えのあるジュラルミンケースが置かれていた。
(あのケース、確か二表の面が入ってた・・・・・・) P48-51

色々細かいトリックの説明があるのだけれど、最初から「自殺とは限らない」という方向から入り、コナンも少し考えた後に早々と他殺と断定してくれるので、細かい理論はいまいちわからないくても問題なし。トリックで重要なのは、後に説明される「犯人は車に詳しい人間」というだけ。

小五郎を呼んだのは細尾。殺人事件が起きたとなれば名探偵に来てもらうことはおかしくないのだけれど、犯人である細尾が小五郎を呼んだのはちゃんと「他殺」であることを見抜いてもらうため。

まぁ、その前に高木刑事も自殺としては不自然であると考えていたのだけれど、その場で確信を持てたのは小五郎の助言があったから。

そして、コナンは遺体の横に二表の面が入っていたジュラルミンケースが空になって置いてあることにも気づく。

「自殺するのにタイムラグはいらない」──

なぜタイムラグを作ったのか。犯行時刻をごまかすなどの意図があったのかとも考えてみたけど、時間差と言ってもファンが回るまでの時間なので、アリバイ作りでない限りはあまり意味がない。

検死をすれば殺害された時間帯はわかるだろうけど、細尾がいつ高橋を殺害したのかの話は出てこない。

細尾は夕方に自宅で聴取を受けている。夜間に家を出て銀座の街を通ったら防犯カメラに映ってしまうのではないかと(笑)そもそも、夕方の聞き込みで普段車を管理している秘書がいないというのはおかしいので、この時既に殺害されていたと考えられる。

秘書のことを聞かれても「わかりません」などと適当な返事をするだけで、電話で確認する意思も見せていない。高橋殺害が自宅に戻る前の日中であれば誰か車に気づきそうなのだけれど、それはアニメの都合というべきか。

というか、細尾は高橋の運転で歌舞伎座まで来たのであって、その車で高橋を殺害して放置したのなら、どうやって家に帰ったのか(笑)別に徒歩でもタクシーでもいいけど、その行動がバレたら一気に怪しくなるのだけれど、そもそも細尾は全く疑われていないためか、誰も細尾のアリバイを調べる気はない。

最後まで読み進めれば、推理ショーで「車で待たせていた高橋の首を絞めて殺害し」とあるので、歌舞伎座で面を渡した後、細尾邸に戻る前と思ったけれど、面の窃盗までは高橋と細尾がグルであったなら夜間の可能性はある。

どちらにしろ、面が盗まれた時刻は歌舞伎座のスタッフが全員帰宅してからなので、細尾は夜中に歌舞伎座に来る必要があり、その現場を金子に撮られてしまっている。

高橋の直接の死因は車のトリックではなくて細尾が首を絞めてのものなので、死亡推定時刻をミスリードすることは出来ない。そのため、死亡時刻が夕方前であった場合は、面が盗まれた時間と合わなくなってしまう。そう考えると、高橋殺害も深夜なのではと思われるけれど、真相は不明。時間帯については一切触れられないので、あまり突っ込むなということかも(笑)

で、結局タイムラグをあえて作ったのはアリバイが目的ではなくて、そこから他殺と判断してもらうためなのだけれど、じゃあ、そもそもなぜ最初から他殺ではなくて、自殺に見せかけた上で他殺と判断してもらう必要があったのかという根本的な疑問。まぁこれはまだ長くなるのでまた後で。

「ヘタをすりゃ胃の中から変な物が出るかもしれねぇ」──

これについても結局最後まで回収されることなく終わってしまう。まぁ、話が出てこないという事は、単純に死因は絞殺ということ。

トリックを考えれば睡眠薬の成分が出てくるかもしれないと思ったのだけれど、細尾は無警戒だった高橋の後ろから首を絞めて殺害したようなので、そんなものは使っていない。

ここは、実はもっと早い時間に毒殺されていて── などの可能性がまだありえる含みを持たせているのだけれど、思わせぶりなフラグを立てておいて本当に何もないという(笑)

「同じ会社の人なんです!」
若い女性がバリケードテープの前にいる警官に止められていた。

・・・

警官の丁寧かつ力強い口調に、女性は仕方なく引き下がった。踵を返してとぼとぼと歩き、螺旋階段近くの柱によろめくようにもたれかかると、静かに泣き始めた。
「お姉さん、大丈夫?」
コナンがハンカチを差し出すと、女性は振り返り、涙を流した目で見た。ショートヘアにスーツをきっちり着こなしたその女性は、見るからに銀座でバリバリ働くキャリアウーマンだった。差し出されたハンカチを受け取ることなく、背中を向けてバッグから自分のハンカチを取り出すと、どことなく気の強そうな瞳から流す涙を拭いた。
「・・・・・・大丈夫よ、ボク」
「潮路君!」
女性に気づいた細尾がブルーシートから走ってきた。
「社長!高橋さん、本当に・・・・・・」
その女性── 潮路ゆかり(32)がブルーシートに向かおうとして、細尾はゆかりの両肩を押さえて止めた。そして無言でうなずく。

ゆかりは大きく目を見開くと、ガクリとうなだれた。抱き寄せようとする細尾の手をすり抜け、壁に手と頭をつけてうっ・・・・・・と声を詰まらせる。

螺旋階段の陰から見ていたコナンは、涙をこぼすゆかりの瞳がどこか鋭く宙をにらんでいるように見えた──。 P53-54

潮路ゆかりがここで初登場。ショートヘアにスーツとあるのだけれど、ちょっとイメージが違う。でも、見直したら確かにショートヘアだった。

ややオーバーアクションに思える行動から演技をしているようにも思えるのだけれど、ただの同僚の死を悲しむのにこんなに涙を流したら逆にバレてしまうのではと(笑)

それに、演技であるのなら、誰も見ていないビルの陰に隠れて静かに泣く意味はない。コナンが見ていることに気づいていないようだし、コナンをミスリードさせるよりは警察関係者に見えるようにこれをやるべき。これは心の声みたいなものなので、まぁ潮路は高橋の恋人か何かだなとは思いました。

「涙をこぼすゆかりの瞳がどこか鋭く宙をにらんでいるように見えた」というのは、演技であるミスリードでもあり、実際は細尾を疑い恨んでいるという伏線でもある。ただ、これはアニメでは描写はない。

「おお、コナン君」
「お面なくなったの?」
「相変わらず情報早いなぁ」

・・・

「どうしたの?」
「おじさん、指紋取られたんだよ。疑われてんのかな~~~」
不安げに顔を上げる箕輪に、コナンは「それは違うよ」と微笑んだ。
「この部屋に入った人はみんな取られるから」
「この子の言うとおり。箕輪さんたち以外の指紋が出れば捜査が進展するってわけです」
ロッカールームから出てきた白鳥が言うと、箕輪は「そうなんですか」と胸をなでおろした。すると、白鳥は残念そうに「今回は無理っぽいけどね」と付け足した。

「出なかったの?」
コナンがたずねると、白鳥は「ああ」とうなずいた。
「犯人はビニール製の手袋をしていたらしい。トメさんが言うには、革なら革の表面の凹凸が残るらしいんだ」
(ビニール製・・・・・・普通に手に入るものか・・・・・・)
だとしたら、そこから犯人を割り出すのは無理だ。 P54-55

一応、箕輪もここで初登場。前日にロッカーの前にいたスタッフ二人は別の人。やはり、面は盗まれていた。犯人はどこでも手に入るビニール製の手袋をしようしていたため、指紋は検出されず、そこから犯人を割り出すのは無理。

コナンは考えながら、こじ開けられた跡があるロッカーに目を向けた。
「お面はあの中に?」
「藪崎さんのロッカーさ。今朝見つけたのも本人」
白鳥が言うと、コナンは「おじさん」と箕輪に声をかけた。
「ちょっと訊いていい?」
「何だい?」
箕輪に質問をしたコナンは階段で地下駐車場に下りた。駐車場には車が数台停められていて、コナンは探るようにゆっくりと進んだ。地上からスロープを下りたところに、小さな扉が見える。
(ここからあの通用口へ・・・・・・)

・・・

「窃盗事件で収まらずに殺人か・・・・・・」
「まだ決まったわけじゃないけど、自殺なら車に残されたケースに二表の面がないのは変でしょ」
海老蔵は「そうだね」とうなずいた。
「高橋さん自身が盗んだならその中にないとね。あきらかに第三者が持ち去った・・・・・・売りさばくためか、個人的な趣味か・・・・・・」「二表の面の価値を知る人物・・・・・・」
コナンが犯人像を絞り始めると、海老蔵も後に続いた。
「頭取のロッカーにそれがあると知っている人間・・・・・・意外と絞られるんじゃ?」 P56-58

いくら自殺に見せかけて高橋を殺害しても、面を持ち去った時点で他殺を疑われてしまう。最初から自殺に見せかける必要がなかったのなら、わざわざ巧妙な手口を使う必要はない。そう考えると、最後に面を持ち去った人間と高橋を殺害した人間が別にいるのではないかと考えるのが自然で、この時点でコナンは何らかの目的で、「あきらかに第三者が持ち去った」と判断している。

ただ、面をロッカーから持ち出した人間は頭取のロッカーに面があることを知っている人間であり、第三者が持ち去ったのなら、面の価値を知っている人間となる。それはこれまでに出てきた歌舞伎座の関係者に絞られる。

「ロッカーの開け方はものすごく乱暴なのに、他の鍵がきれいなんだ」
「他の鍵?」
「うん。箕輪さんが昨日の夜帰ったのが二十三時三十分。このビル全体のセキュリティーがかかったのも表の鍵をかけたのと同じ時間」
コナンは先ほど箕輪から聞き出したことを伝えた。
「カードキーを持ってる人は結構いるけど、その先の鍵は箕輪さんを含めて受付の人たちだけしか持ってないってことは・・・・・・」
「ピッキングの名人?」
海老蔵があごに手を当てて言うと、コナンは「そうなるよね」と眉をひそめた。
「最新のシリンダーは傷もつけずに侵入してるのに、あんな簡単なロッカーをバールのような物でこじ開けるなんて・・・」
「なるほど。変な話だ」

「ここの鍵を手に入れることができるヤツか・・・・・・」
「防犯カメラの位置も知ってるらしいし」
コナンが言うと、海老蔵は「えっ」と目を丸くした。
「そんなこともわかっちゃうの?そうか、君はさっきまでそのルートを探っていたんだ」
「うん。この中ってカメラはあるんだよね。さすがに皆さんの楽屋の方は厳重なんだけど、エレベーターさえ使わなければ、ロッカーのある部屋まで映らないで行けちゃったよ」
コナンの話を聞いて、海老蔵はう~んと困った顔をして頭をかいた。
「それはねえ・・・・・・そうなっちゃうかな。何せさ、頭取たちの部屋に金目の物はないからなあ」
P58-59

犯人は防犯カメラの位置まで把握していたため、普段から歌舞伎座に自由に入ることができ、事前に綿密な予習をしていたことがわかる。

そして、ロッカーの開け方はものすごく乱暴なのに、他の鍵がきれいなまま。「カードキーを持ってる人は結構いるけど、その先の鍵は箕輪さんを含めて受付の人たちだけしか持ってない」。

普通に考えれば、ピッキングの名人が鍵を開けて内部に侵入したことになるけれど、最新のシリンダーを開ける技術があるのなら、ロッカーの鍵なんてたやすい。

となると、外の鍵を開けた人間とロッカーを壊した人間が別。あるいは、同一人物であった場合は、あえてロッカーだけバールで壊すことによって、何らかのミスリードをしようとした── ということになる。

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更新日:2016-3-8
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