コナンと海老蔵【歌舞伎十八番ミステリー】まとめと感想

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前編(2/5)

「この面は鎌倉時代に作られた物で、作者はわかってないんですが、一一八五年から一一九五年にかけて行われた東大寺大仏殿の復興工事のときに使われた材木と全く同じ物で作られていたんです。つまり、大仏殿を造ったときの余った材木で作った物なんです」

「ほぉ・・・・・・木のDNAってあるんだ・・・・・・」

「海外のコレクターで渡っていたのを、社長が買い戻したんです」
「いつ、いくらで買われたんですか?」
「そりゃ億は──」

「金額なんてどうでもいい。日本文化財の海外流出は問題だからね」

「以前、細尾さんに二表の面を見せてもらったことがあるんで、今度のお芝居で使わせてもらうことにしたんだ」 P27

「日本文化財の海外流出は問題」という発言は面に対する思いを印象付けているのだけれど、最終的にはそれが逆に仇になって疑われる要員にもなってしまう。

東大寺大仏殿と同じ木であれば、「後で調べれば本物か偽物かわかるな。」「調べればバレてしまうようなリスクは負わないかな」という視点で見ていたのだけれど、そんなのおかまいなしに偽物が登場し、整合することもなかった(笑)

「ということは、あなたが毛利小五郎さんだ!」
「海老蔵さんが大ファンというので、お連れしたんです」 P28

先述したように、小五郎を連れてきたのは細尾の意図的な行動。

「君のことも知ってるよ」

・・・

「怪盗キッドに勝利したときのことははっきり覚えてるよ。君も将来、名探偵だね」 P29-30

ゲストキャラだから犯人ではないという先入観を持つのは危険なのだけれど、コナンのことを知っているという設定からもうここで今回は違うなと思いました。この後でも、コナンが普通の子供でないことに気づいていて、信頼して捜査を任せていたりするので。

「なぜ<七つ面>を選んだかっていうさっきの質問だけど、人にはいろいろな面があるだろう。優しさ、怒り、嫉妬とか・・・・・・それを表現してみたいんだ。つまり、人間のミステリーかな」 P30

優しさ、怒り、嫉妬。人間の複雑な感情を表現したミステリーが今回のテーマになるのか!?と思ったら、全く関係なかった(笑)まぁ、一応最後「毛利小五郎の七つの面」という推理ショーをやったり、この面のように、人間には多面性があるってオチはつけているのだけれど。

ちなみに、ノベライズだとここのシーン含めて、複数の場で挿絵が入るようになっている。といっても、アニメで使用された一コマだけど。その分、読みやすくなっているし、元々劇場版なんかよりも短いのだけれど、挿絵の分もあって本編のボリュームも若干少なくなっている。

面白がって二人の写真を撮りまくっている金子のそばで、岩見がハァ・・・・・・とため息をつく。 P31

ここも岩見のため息。何か悩みを持っている様子。

「それではお預かりさせていただきます」
薮崎は面を戻してジュラルミンケースを閉めると、大事そうに胸に抱えた。 P31

・・・

ジュラルミンケースを抱えてエレベーターに残っていた薮崎は、前を行く細尾に声をかけた。
「私はこれをロッカーに保管してきます」
「ああ、頼みます」 P32

実はここは重要で、犯人は部屋を物色することなく、薮崎のロッカーからピンポイントで二表の面を持ち出している。なので、面を持ち出した犯人は薮崎が面を保管していること、その場所がロッカーであることを知っている人物に限られる。

普段から仕事を一緒にしている歌舞伎座のスタッフ(面が数億円の価値で、当日細尾が面を持ってきたことを知っている人間)であれば習慣から想像は付くかもしれないけれど、それ以外の人間には無理。なので、ここで設定が曖昧な細尾に藪崎が声をかけるシーンが描かれている。

「スターシステムってわかるかな? 歌舞伎で一番大切なのは役者の芸と魅力を引き出すことなんだ。 より海老蔵さんならではの舞台にするために、脚本も演出も全員で作っていくんだ」 P34

このSPの海老蔵さんも、まさにスターシステムでした(笑)正直、海老蔵さんを「かっこいい」という視点ではみたことがなかったのですが、(失礼)この話の海老蔵さんはかっこよかった。

「役者の邪魔はするなよ」
「トーシローじゃねぇよ」
と吐き捨てながらもシャッターを切り続ける金子を、細尾はにらみつけながら部屋を出ていった。 P34

これも、金子と細尾の仲が悪いところを描いたシーン。でも、細尾は別に金子と仲が悪かったから殺したわけではない。

細尾をが稽古場から出てくると、高橋はエレベーターの前を通り廊下の奥へ細尾をいざない、何やら小声で話し始めた。

コナンはエレベーターの横にある柱の陰から二人をそっとうかがった。 P35

細尾と秘書の高橋が会話をしているのだけれど、後になっても明らかにされず、何を話していたかは不明。たぶん、ストーリー的に考えれば外国人に面を売る商談の話か?

コナンも会話の内容までは聞き取れていないはずなので、ここで二人を疑うような証拠は得られていないはず。

『今、鑑識から届いた。車から出た指紋は数人分あるんだが・・・・・・』

・・・

コナンは高橋と細尾の様子をうかがいながら、小五郎の電話にも聞き耳を立てた。小五郎が目暮の話を聞きながら、フン、フン、・・・・・・と相づちを打つ。

「やはりブレーキホースが故意に細工されたからには、殺害目的・・・・・・」
『そう考えるのが自然だろう。自宅の車庫を調べたい。一緒にいるなら連れてきてくれないか』 P36

車からは指紋が数人分。と言っても、過去に車に乗った人間の指紋が含まれているかもしれないので、これだけでは何とも。少なくとも、ブレーキに細工されたのは確か。

稽古場の扉が開き、藪崎と役者に両脇を支えられた岩見が出てきた。
「早く病院へ!」「大丈夫ですか!?」
額から汗を噴出した岩見は、ハァハァ・・・と荒い息を吐いている。

「岩見? どうしたんですか?」
「急に苦しみだして・・・・・・とにかく急いで病院へ」
薮崎の背後では、海老蔵が心配そうに岩見を見つめていた。
「それがいい。高橋、うちの車を使え!」
「は、はい!」

・・・

「荷が重すぎたんじゃねーの? いくら新進気鋭の劇作家って言っても、<七つ面>を新作歌舞伎として創り直すのは無理だって」 P36-37

岩見が体調を崩して病院に運ばれる。金子は「荷が重すぎたんじゃねーの」と言っているが、この時点で仮病なのか何なのか、本当の原因はまだわからない。

細尾が「それがいい」「うちの車を使え」と言って病院に行くことを急がせたのが意味深なので、伏線だったのかなと思ったけれど、この時点で岩見に罪を被せるつもりだったとしても、「自宅から抜け出してくる」「病院から抜け出してくる」どちらもそう変わらないので偶然かも。

病院に行ったとしても、そこから夜中に抜け出して歌舞伎座に来るという行動は岩見の意思だし、その行動を予測した計画は不確かすぎる。

「昨日の夜は会社で打ち合わせを済ませ、帰宅しました」
「その時車は同じ?」

「はい。運転は秘書の高橋でしたが・・・・・・。 翌日は海老蔵さんのところに寄ってから出社する予定で、私がその車を使うから高橋にはワゴンの方を使うように指示してガレージから出ました。車で自宅に戻ったときは高橋が車内を清掃して帰るのが決まりなんです」

「高橋さんはその後どれくらいここに?」
目暮がたずねると、ガレージに停められたスーパーカーを背にしていた細尾は首をひねった。
「私は書斎にいたんで、いつ高橋が帰ったかわかりません」
「挨拶はなしですか・・・」
高木ががっかりした様子でメモを取る。するとガレージの入り口で柱にもたれかかかっていた小五郎が「監視カメラは?」とたずねた。

「ここが入るカメラは・・・・・・あそこですね」
細尾はガレージの向こうにある大きな住居を指差した。ガレージの外にいた蘭とコナンが後ろを振り返る。すると一階の軒下に監視カメラが取り付けられていた。

「録画されてますよね?」
高木の問いに、細尾は「もちろん」とうなずいた。
「見せていただけますか?」
「どうぞこちらへ。ハードディスクに入ってますから・・・・・・全十台、七十二時間分は残っています」

細尾たちはコナンの横を通って住居に向かった。コナンも一同についていこうとしたが、「コナン君!」蘭に呼び止められた。

「邪魔しちゃいけないから私たちは帰りましょ」
(やっぱそうなるか・・・・・・)
コナンは軽くため息をつき、門へ向かう蘭の後を追った。

コナンは表の通りに出た。すると一台の車が通り過ぎていき、何気なくその車を目で追うと、二十メートルほど先にコンビニが見えた。

(コンビニか・・・・・・あそこなら・・・・・・) P41-42

もっとも重要な箇所の一つ。何者かによって、車に細工がされていたのは事実。昨日は同じ車を使い、高橋の運転で帰宅。前日に、海老蔵さんのところに寄ってから出社するために高橋にはワゴンを使う用に指示してガレージから出る。車で自宅に戻ったときは高橋が車内を清掃して帰るのが決まり。高橋は挨拶はなしで帰ったために、いつ帰宅したかはわからない。

ガレージの向こうにある大きな住居の軒下には防犯カメラが設置してある。ハードディスクには全十台、七十二時間分残っている。高木刑事はそのカメラを見せてもらうことになるが、コナンは蘭に止められてしまう。

あきらめて帰ろうと表の通りに出ると、一台の車が通り過ぎていき、何気なくその車を目で追うと、二十メートルほど先にコンビニが見えた。そして、コナンは「コンビニか・・・・・・あそこなら」と何かを考える。

現時点で細尾の自作自演は考えられないため、普通に考えればまず高橋が疑われる。しかし、この場には居合わせていないため、事情は聞けず。もし外部の人間が侵入したのであれば防犯カメラに映るはず。そのため、高木刑事は映像を見せてもらうことになる。

外部犯なのか内部犯なのか、通常なら高木刑事の報告を待ってから考えれば良いのだけれど、このカメラの映像がどうだったのか、推理ショーまで全く出てこない(笑)

そして、コナンのモノローグ。これは読者にもわかりやすい演出で伏線とわかるようにされている。最初にアニメを見た時、前編を見直してここの意味を必至で考えたのだけれど、全くわかりませんでした。

結果は防犯カメラが付いていること(それを確認すれば証拠になる)なのだけれど、実はこの時までのコナンの頭にある情報から判断すると、「あそこなら防犯カメラがついているな」とボヤっと考えただけの話で、読者がここから何らかの推理ができる伏線と言うか、後々話に使われるフラグでしかない。

と言うのも、まだコナンは細尾邸の防犯カメラの映像を全くチェックしていないし、細尾の自作自演を疑ってはいない。もし疑っているのであれば、事故が起きた現場でもう一度調査するはずで、それは終盤もしやと気づいたことで行っている。

この時点では「もし細尾が犯人で映像を加工していたとしても、あそこの映像と比較すれば判断ができるな」と考えた程度。

「はい・・・ええ、起きてたけど。そう思ったからかけてきたんでしょ」

・・・

「ええ・・・ええ、わかった。調べとくわ。大丈夫よ、手ならいろいろ・・・・・・」
ハッキングは犯罪だぞと言われて、灰原はムぅっと顔をしかめた。
「ギャーギャー言わないで。情報欲しいんでしょ?」
そう言うと、電話の向こうのコナンが挙げた名前を次々とキーボードに打ち込んでいく。」
「そんなのとっくよ。このカメラマンってどうなの? ・・・・・・うん、わかった。」脚本家もね。朝までにスマホに送るわ。」 P43-44

灰原がもうコナンの母親みたいなしゃべり方(笑)ノベライズでは「ハッキングは犯罪だぞ」と書かれているけれど、アニメだとカット。やはり、犯罪なのは確かなので、それをやったらマズイと具体的な方法はボカしたのかも。というか、灰原にハッキングできる技術があるのか。いつの間にか博士以上の万能科学者扱い。

「そんなのとっくよ」の、何がとっくなのかが何か示されていないけれど、カメラマンの金子のことを先に調べている?歌舞伎座で初登場した金子の存在を灰原が事前に調べるのは無理なのだけれど… というか、細尾のことも知らないはず。会話を聞く限りでは、コナンが灰原に事件の詳細を語ったのはこれが最初では?

それとも、この会話の途中で「メモは終わったか?」「ネットで調べて欲しいんだけど」というセリフが省略されていて、もうとっくに検索済みよ。プロフィールを見てるけど経歴が胡散臭い。「どうなの?」と聞いてるのかも。

この後、岩見が運転免許を持っていないことをコナンが調べたことが明かされるのだけれど、それが灰原からの報告と考えられる。

灰原が何をコナンに報告したのかは明らかにされていないのだけれど、「脚本家もね」と言っているので、たぶん岩見(コナンが名前を出した人間)のプロフィールを送ったのではないかと。

もしそうでなければ、「明日の朝までに」と言った灰原は調査内容をコナンに何も報告していないことになるし、コナンがどこで岩見の情報を手に入れたのかもわからなくなる。

灰原のキャラを作り過ぎている感じや、「そんなのとっくよ」とか思わせぶりなセリフとかがちょっと強引な感じも否めないので、脚本家がサービスで活躍シーンを入れたのかも。

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更新日:2016-3-8
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