コナンと海老蔵【歌舞伎十八番ミステリー】まとめと感想

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1月頭に2週連続1時間スペシャルで公開された、20周年を記念製作アニメ「コナンと海老蔵 歌舞伎十八番ミステリー」の感想です。

アニメの推理ショーが「えぇ?」だったので、ノベライズから相当カットしてるなと思ったのですが、意外にもほぼそのまま。

今回はアニメもノベライズも視聴者が伏線から犯人を推理できるようになっておらず、決定的な根拠が後出し。アクション&サスペンスっぽい内容とかではなくて、「殺人事件が起きて多数の容疑者から犯人を見つけ出す」というオーソドックスなミステリーなので、がっつり推理させるのかなと思っていたのですが、そうでもなかった。

アニメの場合はサプライズを重視するためか、推理に必要な伏線をカットしたり、わざとぼかして終盤まで犯人がわからないようにするのは珍しくない、というかそのほうが多いくらいなのですが、今回はノベライズもアニメと内容はそれほど変わらず。

とは言え、途中にヒントが全くないというわけではなくて、推理に必要な重要な情報が後出しになっているだけ。それじゃダメですが(笑)

通常はコナンの推理ショーが「ここを抑えていれば推理できたよ」という模範解答となるんですが、今回の推理ショーは犯人を捕まえるための証拠と割り切ったほうがいいかも。犯人が落としたボタンは指紋のようなもの。

読者的には行間を読めばわかる事実もあるし、犯人の行動の意図や心理がわかり難いところが多いので、じっくり考えながら読む価値はあるかも。

名探偵コナン コナンと海老蔵 歌舞伎十八番ミステリー (小学館ジュニア文庫)

前編(1/5)

ノベライズではカラーページに登場人物が紹介されているのですが、通常はコナンや灰原など一部のレギュラーのみ、あるいは失踪事件のようなコラボ作品だとゲストレギュラーがフルネームで紹介。今回はそれに市川海老蔵さん。それになぜか名字のみの細尾(笑)

中途半端に細尾が入っているところで、もうこいつですみたいな?アニメだとサンデーで登場人物が10人「犯人はこの中にいる!」と本格ミステリーのように宣伝しているのだけれど、作中では何人かがミスリード役にクローズアップされているくらいで、「容疑者候補」というほどバックグラウンドが掘り下げられているわけでもない。

予告を煽ったために難しくなっていたけど、内容は元々細尾周辺で話が進んでるだけだったり。とは言え、絶海のように存在感の薄いキャラを犯人にして驚かせる場合もあるので、そんなに簡単ではないのだけれど。

サッカーボールにはじかれた車は道路脇にある古紙再生工場の正門を通り抜け、車体を地面でガリガリと削りながらバウンドしたかと思うと、壁のように高く積み上げられた古紙の山に突っ込んだ。 P11

いきなり序盤にスケボーアクション。ブレーキの効かない車が踏み切りに突っ込もそうになるのを止めるだけなので、このくらいのでちょうどいいと思う(笑)

推理で言えばここが最も重要なシーンで、この自作自演によるアリバイを終盤まで崩すことができないために細尾を犯人にすることができないようになっている。

車が古紙再生工場の古紙の山をクッションにできたのは、コナンが強引に進路を変えたからであって、そのままだったら踏み切りに突っ込んでいた。これは終盤のコナンと灰原の会話でも確認でき、コナンもその考えに同意している。アニメでもノベライズでも、この時点で抜け道があるような伏線はない。

やはりブレーキホースに穴が開けられて、そこからブレーキオイルが漏れている──。

・・・

「あきらかにブレーキに細工されているんですよ」
「それはわかるんだが、私は今日は忙しいんだ」

・・・

「ここでは何ですから、署の方でゆっくりお聞かせ願えませんか?」
「申し訳ないんだが、本当に時間がないんだ」 P11-12

ブレーキに細工をされた明らかな殺人未遂なのに、細尾は自分の命が狙われたことに全く恐怖を感じていない。それだけでなく、「今日は忙しい」と聴取を避けようとする。

一体どれだけ重要なのかというと、この後歌舞伎座に面を見せに行く用があった。えっ?そんなの事情話して時間ずらしてもらえばいいじゃんって。

ここの言動がもうおかしいのだけれど、細尾の自作自演は無理という大前提があるので、何らかの事情がこのあと出てくると考えて、とりあえず据え置きにして進むしかない。

別に事情聴取に行っても良かったのでは?と思われるけれど、その理由は明らかにされていない。そんな回り道めんどうだからというアニメの都合はあるかもしれないけれど…

自分が犯人だから何か聞かれたらマズいことでもあるのかと思ったけれど、あの時点で疑われるようなことはないし、結局夕方には警察が細尾邸を訪ねている。

海老蔵さんは忙しいので、人気の歯医者の並に予約が取れない。そうなってしまうと、秘書の殺害計画とかも全部ずれてしまうので、それを嫌がったとか。

ただ、歌舞伎座には「本日の公演はありません」と張り紙がある。数億円の価値のある面を貸し出すのは細尾だし、多少時間がずれることくらい融通してくれるのでは?。後から聴取を受けているように、犯行準備のために時間の制約があったわけではない。

「今それを警察が調べている。後で顔を出すことになるだろうが、これを届けないことには・・・・・・」
細尾はひざの上に載せたジュラルミンケースを大事そうに抱えた。 P17

歌舞伎座に向かう途中のシーン。自分の命よりも面を約束通り届けることを優先している(という演技)。もしかしたら、面を大事にしている(面を届けることは命よりも大事)ところを周囲に見せることによって、自分が面を壊そうとするわけがないと印象付けようとしたのかも。

国宝級である面の価値が命よりも大切と考えるのはまぁわかる。特にこだわりの強い人間であればそう。ただ、歌舞伎座のメンバーに面を見せることが殺人未遂の事情聴取よりも優先される理由と言うのがやはりわからない。ありがちな、「この取引に失敗すれば数億円の損失がー!」というわけではなくて、面を貸し出すだけ。だから不自然な行動をしている細尾はやはり怪しいのだけれど…

細尾を見つめる園子に、コナンが「知り合いなの?」とたずねる。

「わたしのパパが歌舞伎の大ファンで、舞台の打ち上げで何度もお会いしたことがあるの」
「歌舞伎界の人なんだ」 P15

歌舞伎界の人って言って良いのか(笑)細尾拓也はトレーディング会社の社長。でも、歌舞伎の打ち上げに何度も参加しているように、歌舞伎界に顔が利く。

この情報が結構重要で、あくまで為替取引の社長でありながら、歌舞伎座の館内の情報などを知り尽くしていないとできない犯行を行えた。

物語途中から、犯人は歌舞伎座の内部構造に詳しい人間に絞られるのだけれど、結局、後に殺害される高橋と金子を除いて、歌舞伎座のスタッフでないのに内部を把握できたこの細尾が犯人。

本来部外者である人間をあえて詳しい設定にしたのだから、ここからもう怪しいという裏読みもできたのかも。

「昨日の夜、ガレージに最後にいたのはおまえだろ?」
高橋は助手席の細尾をチラリと見て「はい」と答えた。
「そのとき何かおかしいことはなかったのか?」
「と、おっしゃいますと・・・・・・?」
「怪しい人物がいたとか、そういうことだ」
セカンドシートに園子や蘭と一緒に座っていたコナンは、細尾と高橋の会話を注意深く聞いていた。
「いえ。いればわかりますし・・・・・・」
高橋の答えに、細尾はあきれたようにフっと笑った。 P17-18

歌舞伎座に向かう一行。車内で細尾が秘書の高橋に不自然な点がなかったかどうかを問う。

ノベライズだと、「フっと笑った」と怪しげな表現なのだけれど、実際どんな表情だったのかいまいちわからないので、何ともいえない。アニメだと「う~ん」と悩むような声に変わってる。

「細尾さん、お待ちしておりました」
「私の知り合いを連れてきたんですが、よろしいですか?」
「どうぞどうぞ。頭取の藪崎ともうし申します P19

細尾は自分から名探偵の小五郎を連れてきたのだけれど、普通に考えれば、これから色々やらかそうとしている犯人にとって小五郎がいることは都合が悪い。

ありがちなのが、おっちゃんが名探偵の毛利小五郎だという事実を知ったら血相変えて、「毛利・・・小五郎・・・!?」と驚いて距離を置き始めるパターンなのだけれど、細尾は一向にそんな様子はみせない。

そう考えると細尾は犯人じゃないっぽいのだけれど、これはひっかけというか、後で出てくるのだけれど、小五郎をミスリード役にしたかったからだと考えられる。

別にトリックに名探偵並みの切れ者が必要だったわけではないので、よほどの自信家だったり、因縁がない限りはどんな事件でも解決してしまう毛利小五郎(バックにコナン)をミスリード役にするなんてリスクが高すぎて思考に一貫性がないのだけれど、ここはアニメの都合みたいなところ。

歌舞伎座についたところで園子が「七つ面」について説明。最初、この七つ面にまつわるエピソードをなぞった犯行だとか、二表の面をめぐった事件になるのかなと思って見ていて、そうしたら園子がぐだぐだにしてくれたので、ああストーリーに直接は関係ないんだなとちょっと安心。

正直、あの園子の話のシーンで「う~」と唸ってしまった人も多いのではと(笑)歌舞伎が好きな人には残念だったのかもしれないけれど。ちょっと話が難しかったので。

結果論、事件はただの保険金目当ての殺人でしかなく、二表の面についても、他の希少価値のあるものだったら何でも話は作れたというオチ。単に歌舞伎座を舞台にしたストーリーと海老蔵さんをゲストにしたかっただけ。

業火の向日葵なんかも、もっとゴッホの向日葵についての薀蓄を掘り下げて教養豊かな話にして欲しかったという意見もあり、まあそうすると尺の問題もあるので、アクションやらミステリーやらを骨組みにしているところからさらに切り口を変える必要があるので、ちょっと難しいかも。

テーブルに置かれたジュラルミンケースを前に、スタッフは「これですか」「二表の面」「本物?」とざわつく。 P25

本物?というの声が実はフラグだったり。

「ちょっと待ってよ。アングルを変えるから」
「おい、気をつけてくれよ」

海老蔵の後ろに回り込む金子に、細尾が不機嫌そうに注意する。金子は「はいはい」と言いながら再びシャッターを切った。 P25

カメラマンの金子と細尾の仲が悪いように書かれているのだけれど、細尾が金子を殺害したのは金子に弱みを握られたことと、面を盗んだ罪を着せるためであったので、このやり取りに特別な意味はない。

偽物の面をカメラに取られるのを嫌がった?とも考えられるのだけれど、この後で説明するように、たぶん、この時点でまだ面は本物なのでは?

元々折り合いが悪かったという設定がありそうだけれど、細尾と金子のやり取りはまた出てくるので、単純に「この二人に確執があり、金子が細尾を狙って車に細工をして命を狙ったのでは?」と読者に思わせるミスリードの演出かもしれない。

「素晴らしい・・・・・・!」
恍惚とした表情で面を持ち上げる海老蔵のそばで、岩見は浮かない表情でハァ・・・・・・と小さくため息をついた。

・・・

「この角度ですね」
その力強い目をキラリと光らせた海老蔵は、かざした面の角度を変えた。
すると、微笑みをたたえた表情が一転して怒りの顔に変わった。
一同がハっと息を飲む。
「見る角度によって表情が変わるんですよ」 P26

最初、この面は偽物かもしれないと疑いながら見ていて、海老蔵さんだったら気づくというアニメ設定があるんじゃないかと表情をチェックしていたけれど、違和感なし。

で、最後の最後に偽物だと気づいていたという説明があって、え~と思ったのだけれど、海老蔵さんは「割れたせいかと納得しようとした」と言っているので、気づいたのは実際に面を付けてから。なので、このシーンではまだ気づいていないっぽい。

アニメでは「この面って」というコナンのセリフが入るので、もしかしたら気づいたとも考えられるのだけれど、コナンがここで気づいていたら海老蔵さん超えているので、さすがにそれはちょっと。

コナンのセリフは海老蔵さんが面の角度を変えた後、「見る角度によって表情が変わるんですよ」というセリフの前なので、たぶん面の表情が変わることに気づいたという意味。

この時点では本物の面。ロッカーから盗み出した後に本物と偽物をすり替え、偽物を割って捨てたのでは?と考えられる。それならこの時点で本物なら海老蔵さんが気づかないのは納得。ただ、真相は書かれてはいない。

岩見のため息は明らかなミスリードっぽいのだけれど、この後の事件に何らかの形でかかわってくることくらいしかわからない。

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更新日:2016-3-8
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