映画【業火の向日葵】まとめ

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(注)内容について語るので、完全なネタバレがあります。

・オークション会場(キッド登場)
・飛行機(ひまわり「二枚目」襲撃1)
・美術館(ひまわり「五枚目」襲撃2)
・レイクロック(最終決戦)

大雑把に分けると上記4箇所でキッドが動くという話なので、構成は把握しやすい。ただ、二つの話が平行して進むのと、薀蓄が多いので内容はわりと盛りだくさん。

同じ脚本家の「絶海の探偵」も殺人物とスパイ物が同時進行で絡み合う内容であったけれど、この「業火の向日葵」も事件の犯人とストーリーの根幹に関わるところが別。そのため伏線回収も二つあり、なんだかんだで結構なボリューム。

一応、小説版ベースですが、劇場版はいくつかのカットシーンがあります。

ひまわりのオークション

最初は物語の設定に関わる部分なので、世界観や登場人物、何を巡ってストーリーが展開していくのか等、把握しておかなければならないことが多い。

冒頭の殺人事件

フランス・プロヴァンス地方西部にある町、アルル──。

かつて画家のゴッホが移り住み、数々の名作を描き上げたというその古い町の近郊に広がる畑には、無数の向日葵が咲いていた。降り注ぐ光の下で、太陽のごとく花びらを開かせた向日葵の絨毯がどこまでも果てしなく続いている。

その広大な向日葵畑の中に伸びた細い道を、一台の車が激しくタイヤを揺らしながら走り抜けていった。舗装されていないその道からは向日葵がなぎ倒された跡がジグザグに伸び、地面に散った向日葵には赤い染みが点々と続いている。

その先に、男が倒れていた。向日葵と同じように太陽に顔を向けた男の呼吸は荒く、その胸元は真っ赤に染まっている。男は意識がもうろうとする中、カを振り絞って握りしめた拳銃を太陽に向けた。血が流れる口元をフッと緩ませると、引き金にかけた指に力を入れる。

ドンッと鈍い銃声が響き、一斉にカラスが飛び立った。
太陽のように輝く向日葵畑に、幾羽ものカラスが舞い上がる──。

その光景はまるで、ゴッホの遺作ともいわれる『カラスのいる麦畑』を彷彿させた。
『僕らは日本の絵を愛し、その影響を受け、また全ての印象派の画家はともに影響を受けているが、それならどうしても日本へ、つまり日本に当たる南仏へ行かねばならない』

<ゴッホ 書簡500より> P12-13

冒頭から意味深なシーン。向日葵畑で男が拳銃で殺害される(自害)のだけれど、まだ何が何だかわからない。

いきなり殺人事件が起きているわけだからこれから起きるミステリーの重要なキーになると思わせて、あまり執着しすぎないほうが犯人推理という意味ではスムーズだったり。

実は劇場版ではカットされている。ゴッホの書簡の引用は事実とフィクションであるこの物語とでストーリーが繋がっていくところで、そこは構成の見所。けれど、血だらけの男がひまわり畑で死ぬシーンだけ流してもわけがわからなくなる可能性が高いので、そのほうが話としては入りやすいかも。ノベライズをじっくり読むスタイルでないとこれだけでかなり難易度が高くなる。

ただ、「ゴッホが愛した日本」にひまわりを持ち帰るというのがこの物語のテーマでもあるので、伏線を削って最後に後出し的に扱っても感動が薄れてしまうところもあるけれど。

テーマの方が複雑な伏線を張ったり凝った作りをしていて、絶海もそうだけれど、犯人のほうは後からそこに付け加えたのではと思われるくらいの印象。

新発見の〈ひまわり〉登場

オークション会場で新しく発見された〈ひまわり〉を次郎吉が落札する。

「続いては、本日のオークションの目玉です!」
壇上に立ったオークショニア(競売を取り仕切る人)のハンマーを打つ音が会場に響く。
「国際的な名画にして人類の至宝、失われたと思われていたフィンセント・ファン・ゴッホの〈ひまわり〉です!」

「何だ、あのひまわりは!?」
「確かあの〈ひまわり〉は、戦争で焼けたはずじゃ・・・・・・!」

・・・

「ゴッホはアルルにいた頃、七枚の〈ひまわり〉を描いたといわれていました」

・・・

「その二枚目といわれる〈ひまわり〉が今回、出品されたものです。日本の芦屋で戦火に焼かれたといわれていましたが、昨年、新たに同じ構図のものがアルルで発見されまた。この作品が真作なのかレプリカなのかは定かではありませんが、間違いなくゴッホによって描かれた作品です」 P14-15

昨年、「日本の芦屋で戦火に焼かれた」と言われたひまわりと同じ構図のものがアルルで発見された。ゴッホはアルルにいた頃、七枚の〈ひまわり〉を描いたと言われ、その「二枚目」がこのひまわり。

それが真作なのかレプリカなのかわからないけれど、間違いなくゴッホが描いた作品だという。そして、それがオークションに出されている。

「レプリカ」って言葉は普段ブランドのコピー品(偽物)などを示すのに使うので、絵に詳しくないと「「レプリカ」なのに間違いなくゴッホが描いた」って言っていることがわからないのだけれど、作者自身が描いた模造品のこと。同じものを描いたってだけで、描いたのはゴッホなのでちゃんと価値がある。

劇場版はじっくり見るとひまわりの発見者が後に登場する「東幸二」であることが新聞の隅に書いてある。なので、ノベライズは最後の最後に、冒頭の殺人事件のシーンでひまわりが発見されて、その現場に東幸二がいたという事実が明かされるのだけれど、劇場版は東幸二がひまわりを発見した時に、実は殺人事件があったことが明かされるというオチだったり。

『この作品はなぜ最近まで日の目を見ることがなかったんでしょうか?』

・・・

『それは、この絵が第二次世界大戦で焼失したといわれていたからなんです』
コメンテーターの言葉に、アナウンサーは『焼失!?』と身を乗り出した。
『では、今回の作品は偽物・・・』
『いえ、そういわれ続けていただけだったんです』

・・・

『昨年のニュースなので覚えている方もいると思いますが、フランスのアルルでゴッホの作品と思われる絵が新たに見つかったんです』

新聞記事には“日本で焼失したはずのゴッホのひまわり見つかる!! 贋作か!?真作か!?”と大きく書かれた見出しの下に、南フランスの田舎の風景の写真が載っていた。一面に広がる畑の中にぽつんと古い一軒家が写っている。 P22

前述したように、この絵は第二次世界大戦で焼失したと考えられていた。それならばこの絵は偽物ということになるのだけれど、「そういわれ続けていただけだった」。どういう事かは後に説明される。

昨年「フランスのアルルでゴッホの作品と思われる絵が新たに見つかった」。ノベライズは「アルル」という地名が冒頭の殺人事件が起きた場所と一致することが確認でき、それがひまわり畑であることからも、発見された絵と関係があるのかな?とか色々妄想できる。

例えば、絵を見つけた二人組みがの一人が、相方を殺害して高値で売って大儲けしようとしたとか。でも、そんな余計なことは考えなくていい(笑)

『ゴッホは生前、絵が一枚しか売れず、その一部は人にあげ、世話になった家に放置したこともあったといいます。そのため、いつ新発見があってもおかしくないとする見方も多いんです』

『しかし、贋作である可能性は?』

アナウンサーの質問に、コナンは思わずテレビを振り返った。

『専門家たちもそこは慎重です。オークションで扱うにあたり、詳しい鑑定をしました』

コメンテーターが言うと、画面はスタジオから切り替わって専門家たちが〈二枚目のひまわり〉を鑑定している様子が映し出された。

キャンバスを木枠から外し、機械でその端を拡大していく。そして、ゴッホが一八八八年九月に描いた〈夜のカフェ〉のキャンバスの端と近づけていった。すると、両方のキャンバスの切断面がピッタリと合ったのだ。

『結果、ゴッホがアルルで描いたほかの作品と同じキャンバスが使われていたことがわかったんです』 P23-24

ゴッホは生前描いた絵をお世話になった人にあげていたので、いつ新発見があってもおかしくない。もちろん、新しく発見された絵が贋作である可能性があるけれど、専門家もそこは慎重になって鑑定した。

結果は、今回発見されたひまわりの木枠とゴッホが一八八八年九月に描いた〈夜のカフェ〉のキャンバスの切断面が一致。(発見されたひまわりの木枠はゴッホのものなので、ゴッホが描いたと断定。)

「では、〈芦屋のひまわり〉は贋作だったと!?』

・・・

『ええ、その可能性はなくはありません。さらには、ゴッホが描いた〈ひまわり〉は七枚ではなく、八枚だったという説も新たに出てきています』

初めて聞く情報に、コナンは思わずへぇ・・・・・・とつぶやいた。アナウンサーも『それはどういうことでしょう?』と問いかける。

『今回、鈴木財閥が落札した〈ひまわり〉と七十年前に日本で焼失した〈芦屋のひまわり〉、このどちらかがゴッホ自身が描いた模写作品だという説です』

コメンテーターが説明を始めると、スタジオのモニターに表示された〈芦屋のひまわり〉が二枚になり、全部で八枚のひまわりの絵が製作順に並んだ。

『作者自身が模写を作ることなんて本当にあるんですか?』
『ええ。〈ひまわり〉は現存する七枚のうち三枚が模写で、そのどれもがゴッホ自身が描いたものなんですよ』

十二本のひまわりを描いた七番目の絵と、十五本のひまわりを描いた五番目と六番目の絵が拡大表示される。

『いずれにしろ、今回の作品もゴッホが描いたものですから、今後の研究でいろいろなことがわかってくるでしょう』 P26

発見されたひまわりに関しては本物で疑いようがないのだけれど、そうなると、芦屋のひまわりは偽物ということに。芦屋のひまわりは既に焼失してしまっているためそれを否定することはできないが、ゴッホは七枚ではなく、八枚のひまわりを描いていたという説もある。

その説によると、芦屋かアルル、どちらのひまわりかが(ゴッホの描いた)模写であるという。作者自身が模写を作ることはあり、現存する七枚のうち三枚も模写であるため、芦屋とアルルのひまわりが模写であったとしてもおかしくはない。

長々とひまわりについての説明が続くけれど、ちゃんと頭に入れておくことが大事だったりする。コナンの動きの裏で説明されるところもあり、映像で見ても退屈しないようになっているけれど、逆にサラッと流してしまうかもしれない。

ストーリー的には「新しくひまわりは発見された」ということだけがわかれば問題ない。ただ、なぜここをわざわざこんなに掘り下げて説明しているかというと、重要だから。

この物語の一つの流れ(犯人関連)は、「あるはずのないひまわりが発見される」⇒「本物なの?」という疑いにある。

「日本に憧れたひまわり展」の開催

『えーと・・・今回の落札額、三億ドルでの購入は予定どおりだったということでしょうか?』

驚きながら次郎吉に目を向ける報道陣の中で、なぜかフッと微笑む者が一人いた。帽子を目深にかぶった若い男だ。

『そのとおり!全ては日本でひまわりの展覧会を開催するためじゃ』
『展覧会・・・・・・?』

園子は次郎吉を見てうなずくと、一歩前に出た。
『我々、鈴木財閥は、世界中に散らぼる花瓶に挿された構図の〈ひまわり〉を全て集め、我がレイクロック美術館で〈日本に憧れたひまわり展〉を開催することを、ここに発表します』

衝撃の発言に報道陣からどよめきが起こり、会場が騒然となった。

テレビの前のコナンも驚きを隠せずにいた。いくら世界有数の財閥とはいえ、世界中の美術館や個人が所蔵する〈ひまわり〉を集めることなんてできるのだろか・・・・・・!?

テレビでは、目を丸くした報道陣から『ミス鈴木!』と園子に質問が集中した。
『全ての〈ひまわり〉とは、具体的に何枚になるんですか!?』
『今回の〈ひまわり〉落札も、その計画の一部だったと!?』

園子は『ええ』とうなずいた。

『全ては今日、この場で展覧会のことを発表するためです。そして、集める作品は今回落札した〈ひまわり〉を含め、七点です』
『七枚もですか!?』
『いくら日本の財閥でも、そんなことは不可能では!?』

すると、次郎吉が報道陣をさえぎって口を開いた。
『案ずるな。すでにプロジェクトは進めておる』

そう言うと、次郎吉は園子を見た。園子がニコリと微笑む。
『我々は以前から〈ひまわり〉を所蔵する美術館や個人に、〈ひまわり〉を集めた展覧会を開催したいと宣言していました。そして、今回オークションに出品される〈ひまわり〉を落札した暁には、協力していただく確約もすでに得ています』 P28-29

次郎吉がひまわりを落札したのは「日本でひまわりの展覧会を開催する」ため。そして、今日オークションで落札したのは、「この場で展覧会のことを発表する」ため。

集める作品は今回落札した〈ひまわり〉を含め、七点。いくら世界的な金持ちでも、お金で何とかなるとは限らず全てのひまわりを集めるのは困難と予測されるが、次郎吉は以前から〈ひまわり〉を所蔵する美術館や個人に、〈ひまわり〉を集めた展覧会を開催したいと宣言していた。今回オークションに出品される〈ひまわり〉を落札した暁には、協力してもらう確約もすでに得ているとのこと。

次郎吉の自信満々の発言に、司会者は「もしもですが・・・」と口を開いた。

「七枚全てが集まらなかった場合でも、落札された〈ひまわり〉は展示していただけるんでしょうか?」

「いや!7枚揃わねば決してやらん」 P32

少し後にひまわり展の説明があるのだけれど、もし七枚全て揃わなかった場合は落札したひまわりは展示しないと決めている。実は、この発言が後の重要なフラグだったり。

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更新日:2015-11-25
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