コミック30巻。もはや中途半端なレギュラーキャラよりも知名度の高い、あの方候補として有名なあの烏丸蓮耶が登場する話。
結構大きな話のイメージがあるわりには事件そのものはシンプル、特に説明するようなところもないのだけれど、一部勘違いされやすいところも。烏丸のことで夢中になってしまうのがその原因なのだろうと思うけれど…
事件について
コナン:「そう・・・爆発の直前に車から抜け出し茂みに隠れこっそりこの館に戻って来たあなたは、館内に取りつけた隠しカメラでオレ達をどこかの部屋で監視してたんだ・・・」 File:302
どうでもいいのだけれど、事件の犯人である千間降代は車の爆破で死んだと思わせ、爆発の直前に抜け出して茂みに隠れ、こっそり館に戻っていた。
あれ、どこかで見たような?キャメルとか赤井とか(笑)でもこっちのほうがずっと先の先輩。むしろキャメルがパクリだし、赤井はまたそのパクリ。しかし、ばあさんにそんなことできるのか?という疑問。
このばあさん(63歳なので、ばあさんというにはちょっと早いが)、ラストもヘリから飛び降りてなかなかアクティヴなところを見せているのだけれど、まぁたぶんキャメルのようなきわどいタイミングではなくて、数秒前にってことでしょう。
降代:「い、いつから私が犯人だと?」
茂木:「このボウズがオレ達にコインを選ばせた時からさ・・・」「あの時バアさん、手を伸ばしてわざわざ遠くにある10円玉を取ったろ?」「それでピーンときたんだ・・・」「あんたは他の奴に10円玉を取らせたくなかったって・・・青酸カリがついた指で10円玉を触られたら酸化還元反応が起こりトリックがバレちまうからな!」
槍田:「だから私達、犯人をあなたに絞りすぐに結束できたってわけ!」
白馬:「死体の右手親指のツメを見た時点でトリックは読めてましたしね・・・」 File:302
実は集められた名探偵たちはコナンがコインを選ばせた時から千間降代が犯人であることを見抜いていた。これはほんの序盤のことなのだけれど、白馬、茂木、槍田の三人それぞれが怪しげに笑うシーンがその根拠でもあり、読者へのミスリードともなっている。
死体の右手親指のツメを見た時点でトリックに気づき、千間が手を伸ばしてわざわざ遠くにある10円玉を取った時点で絞込みができていた。この三人なかなかの切れ者。
優秀な探偵達を集め、利用して暗号解読させるどころか、自分の犯行をあっさり見破られてしまったのだから間抜けとしかいいようがない。まぁ、結局はコナンに暗号を解いてもらうことはできたのだが…
それに千間についても、最初に小五郎(キッド)の運転する車に乗り込んだときの推理だったり、最後にコナンに狙われたキッドを助けたところなど、なかなかのキレ者ぶりを発揮している。ちなみに、この時のキッドは無免許運転。
紛らわしいところ
<まずは見てくれたまえ!今、諸君の手元にあるフォーク、ナイフ、スプーン・・・ そして食器類の数々を・・・>
蘭:「鳥・・・?」「クチバシが大きくて不気味な鳥のマークがついてる・・・」
小五郎:「これ、烏じゃねーか?」 降代:「・・・だとしたらこれはもしや・・・」
<もうおわかりかな?><それは半世紀前に謎の死を遂げた大富豪、烏丸蓮耶の紋章だよ・・・>
小五郎:「か、烏丸蓮耶!?」
<食器だけではない・・・この館の扉、床、手スリ、リビングのチェスの駒からトランプにいたるまで全て彼が特注した代物・・・><つまりこの館は烏丸が建てた別荘・・・><いや、別荘だった・・・><40年前この館で・・・><血も凍るような惨劇が起こったあの嵐の夜まではね・・・><有能なる名探偵諸君なら、この館に足を踏み入れた時にすでにお気づきでしょう・・・ 飛び散ったおびただしい血の跡に・・・><そう・・・それはこの館がまだ美しさを保っていた40年前のある晩・・・>
<この館に財界の著名人を招いてある集会が開かれたのだよ・・・ 99歳で他界した「烏丸蓮耶を偲ぶ会と」銘打ってな・・・><だがその実態は烏丸が生前コレクションしていた高価な美術品を競売するためのオークション、その品数は300点を超えオークションは3日間行われる予定だった・・・>
<そしてその二日目の夜・・・オークションがたけなわだったこの館にずぶぬれの二人の男が訪ねて来たのだ・・・><その二人の男は寒さに震え唇でこう言った・・・><「この嵐で道に迷い途方に暮れていたところ・・・ 山を見上げたら明かりが見えたのでやって来た・・・ 嵐が止むまでここに居させてくれ」と・・・>
<オークションの主催者は、最初彼らを館に入れるのを渋っていたが・・・><彼らからお金の代わりにと一枚の葉を渡され態度が豹変した・・・><主催者は彼らに言われるままにその葉を紙に巻いて煙草のように吸い、みるみる内に陽気になって彼らを館内に受け入れたのだ・・・><その様子を見た他の客達も彼らに葉を勧められ・・・ 館内にその葉の煙が充満した・・・>
小五郎:「ま、まさか・・・」 降代:「まさかその葉っぱって・・・」
コナン:(マリファナ・・・)
<しばらくすると客だったある男が悪魔を見たような悲鳴をあげ・・・ 自分が競り落とした美術品を抱えて館内を走り出し・・・><ある女は涙が涸れるまで泣き続け・・・><またある男は嬉しそうに自らの腕を手にしていたペンで刺した・・・><やがて客同士で美術品を奪い合うようになり、オークションの品だった名刀や宝剣で殺し合いが始まり・・・ オークション会場は地獄絵図とかした・・・><そして悪夢の一夜が明け・・・ 八名の死者と十数名の昏睡状態の客達を残して、その二人の男は美術品と共に消えていたというわけだよ・・・>
小五郎:「し、しかしなんでそんな大きな事件が世間に知られていないんだ?」
大上:「恐らくその客の中にいたのだよ・・・」「政界に顔の利く名士か、もしくはその一族がな・・・」
降代:「なるほどねぇ・・・誰が殺したかわからないその状況にそんな人がいたのなら・・・」
白馬:「ヘタに解明される前に事件をまるごと握り潰した方が得策と判断したんでしょう・・・」
茂木:「フン・・・それもその二人の男の計算の内だったんだろーがよ・・・」
槍田:「まったく・・・食欲のそそるステキな昔話だわね・・・」 File:300
そしてここからが本題。長~い話だけれど、結論から言えば上記の話は真に受けてはならない。日常編のトリック自体はシンプルなものだけれど、やたら凝ったこの話と設定のせいで小難しく感じるのかもしれない。
上記を簡潔にまとめると
・烏丸蓮耶は半世紀前に謎の死を遂げた大富豪。
・40年前、99歳で他界した「烏丸蓮耶を偲ぶ会」と銘打って、烏丸が生前コレクションしていた高価な美術品を競売するためのオークションが開かれた。(40年前、烏丸は既に99歳で亡くなっている設定。)
・ずぶぬれの二人の男が館にやってきて、お金の代わりにと一枚の葉を渡す。
・他の客達も彼らに葉を勧められ館内にその葉の煙が充満。やがて客同士で美術品を奪い合うようになり、オークションの品だった名刀や宝剣で殺し合いが始まり、 オークション会場は地獄絵図とかした。
・悪夢の一夜が明け、八名の死者と十数名の昏睡状態の客達を残して、その二人の男は美術品と共に消えていた。
この説明のせいで、「やって来た二人組みはジンとウオッカではないか?」とか、色々な噂が広がっているのだけれど──
コナン:「あれれ?ピアノの鍵盤の間に何か挟まってるよ!」
茂木:「ん──?」「こ、こいつは!?」「奴が言ってた宝の在処を示した暗号!?」
小五郎:「し、しかし何でワラ半紙にガリ版削りなんだ?」
茂木:「多分、まだコピー機がなかった時代に、誰かがこの文章を大量に刷って何かの目的で大勢の人間に渡したんだろーよ・・・」「つまり、奴が言ってた40年前にこの館で起きた惨劇って話も、それになぞらえて作った宝の隠し場所の暗号ってヤツも・・・」「みんな眉唾もんだってこった!」 File:301
テープに吹き込まれていた話は、今回の事件の犯人が集めた探偵たちに暗号を解かせるための作り話でしかない。つまり、オークション会場だとか二人の男だとかは紛らわしいので一切忘れてしまったほうがいい。
次ページへ