シンフォニー号連続殺人事件【影の計画師】

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二人の具体的な推理

犯行が可能なのは蟹江と亀田の二人。そして、二人の意見が食い違ったのだから、それぞれ、犯人と被害者を逆で推理をしたことになる。

間違いやすい解釈

服部の解釈 ─

【犯人は亀田で焼死体が蟹江】

「見てみい!この時計が何よりの・・・」

⇒この時計が何よりの「証拠」。服部は焼死体が腕を上げていたのは犯人のトリックではなくて、自然現象と考えている。それなのに時計を根拠に焼死体が誰であるかを判断しているのだから、蟹江の時計をしている焼死体は蟹江のものであり、未だ出てきていない亀田が犯人。

コナンの解釈 ─

【犯人は蟹江で焼死体が亀田】

「それこそ犯人をトラップ・・・」「と見せかけて実はあの人!殺されたと思わせてまだどっかに隠れてる・・・」

⇒服部の推理に対して、コナンは時計がトラップと考える。焼死体が蟹江の時計をしているのに、その時計は発見者に間違った判断をさせる仕掛けと言っているのだから、焼死体は時計の持ち主の蟹江ではなく亀田。

また、殺されたと思わせているのは蟹江の時計をしている蟹江であるので、逃げ回っているのは蟹江で、焼死体が亀田という意味に受け取れる。

上記はセリフを部分的に解釈すると一見正しいように思えるが、犯人の意図と他のセリフ含めて考えると辻褄が合わなくなる。

正しくは以下の推理。犯人、被害者が蟹江と亀田である点は変らないが推理が逆。

服部の推理

【犯人は蟹江で焼死体が亀田】

「死体を箱に入れた時、体を下にズラして両腕上げさせとった証拠やで!」「そんな事せなアカンのはあの人しかおらん!」

両腕を上げさせなければならないのは、服を着替えさせる必要があるから。蟹江の服に着替えさせて、焼死体が蟹江のものであると見せかけなければならないのは亀田のほう。

「この時計が何よりの」と言いながら、「パシ」と時計を外しているのだが、これは時計がゆるんでいたからすぐに外せた。服部が時計が証拠と考えたのは、時計がゆるんでいたので焼死体は本人ではないということ。(腕の細い蟹江に合わせた時計は、腕の太い亀田にはサイズが合わないため。)

「それより問題は、死体がつけとる腕時計の方や!」「見てみこのベルト・・・」「外れてるやろ?」

少し前に、服部は腕時計のベルトに目をつけている。

そんなもん、死体と一緒に箱に入っていた、このガソリンの缶が爆発した時にはずみで外れたんだよ!」

小五郎が突っ込んだために服部の考えが遮られてしまうのだが、服部は小五郎に同意したわけではなかったのである。

ごく一般の人なら、蟹江の時計をしているから見たとおり焼死体は蟹江だと考える。これがちょっとした探偵なら、犯人である蟹江が自分の服を亀田に着せて自分は死んだと見せかけたと考える。ベタな推理であるが、服部は探偵なのでそう推理している。

コナンの推理

【犯人は亀田で焼死体が蟹江】

服部と逆の推理。「と見せかけて」というのは、犯人が自分の服を焼死体に着せて偽装したという見せかけ。犯人はありがちなトリックを使って逃走していると思わせ、その逆が真相と考えている。

「殺されたと思わせてまだどっかに隠れてる」というのは、蟹江に自分の服を着せられ焼かれたと思わせた亀田が、実は生きていてまだ隠れているということ。

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読者視点から言えば、亀田が銃を突きつけられているシーンが描かれているので、亀田が犯人でないことはわかる。まぁ、ここから形勢逆転という可能性もありえないわけではないが…

とは言え、ちょっと推理としては邪道だが、服部の推理が正解でコナンの推理が間違いという結末もないであろう。二人の推理が食い違うという事は、服部の推理は間違っていると考えていい。

さらに、露骨に差を付けることもないので、後から新一が修正という流れでなく、こうした同時推理をさせる場合は二人とも間違っているパターンが多い。(23巻の時点で、そうした二人の立ち位置を意識するのはまた難しいことではあるが。)

二人が亀田か蟹江が犯人と考えているのだから、真犯人は別にいるということ。ただ、最終的にはトリックを使えば犯行は誰にでも可能という結論。

ゲスト乗客6人のうち亀田と蟹江の2人を除いた残り4人。1人は20年前の強盗犯一味で、残りはその時に殺害された銀行員とボスの叶才三の関係者。前者ならお金の独り占め、後者なら復讐目的となるが、後者の場合は動機がわかっても、その3人からさらに根拠を見つけ1人に絞らなければならない。

犯人はポセイドン復活のメッセージを残したりして、復讐に”見せかけている”。となれば真意はそうではない。そこまで見抜けば、消去法で残るのは1人。

最終的に鯨井はミスをすることで矛盾と証拠を残してしまうが、「犯行は誰にでも可能で動機もある」という状況で、御用となるきっかけの銃で撃たれる偽装をする前に鯨井が犯人であると絞るにはこうした視点も必要。

二人の推理を裏付ける根拠

小五郎:「焼死体発見直後に蟹江さんが自殺するとトリックが不自然に見えてしまうからですよ・・・蟹江さんが死体に自分の服を着せたという偽装トリックがね!」「死体の両手を上げたのも、時計のベルトを外したのもそう推理させるためのフェイク!」「大阪から探偵役として服部平次を呼んだのもそのためだ!」「もっとも鯨井さんは、探偵役は我々にも務まると踏んだようですが・・・」 File:230

犯人は蟹江が亀田に自分の服を着せて逃げていると思わせようとした。死体の両手を上げたのは自然現象であるが、それを知った上でのトリック。時計のベルトを外したのは、時計の持ち主と焼死体が別人であると推理させるため、わざとそうした。普通の人ならそこまで頭は回らないが、探偵ならそれに気づく。だから犯人は探偵(服部)を利用した。

服部はその思惑にまんまと引っ掛かってしまったのだから、服部の推理は時計の持ち主と焼死体が別であるパターン。蟹江が犯人で遺体が亀田である。

小五郎:「時計ですよ・・・」「右腕用の時計を、焼死体が左腕につけていた時点で蟹江さんは容疑者から外しました・・・」「自分の恰好をさせるのに自分の時計をつけ間違える人はまずいないとね・・・」 File:230

コナンは手のひらを返して自分の推理を変えたわけではない。そうしたシーンや根拠はない。

小五郎:「犯人は我々以外の誰か・・・」「もしかしたらみなさんの中の誰かが、一人になるのをどこかで息を潜めて待ち伏せしているかもしれませんからな!」

コナン:(確かにそうだ・・・最初に銃声がした時、鮫崎さんはオレ達とレストランにいたし、鯨井さんもトイレから戻って来ていた・・・)(そしてみんなで上のデッキに駆け上がった直後、船尾で爆発が起こり死体が入った箱に火がつけられた・・・)(レストランから上のデッキに駆け上がるまで誰ともはぐれてないし・・・)(途中で合流し、一緒にデッキに駆け上がった海老名さんと磯貝さんも火をつけるのは無理だ・・・)(となると、あの焼死体が誰だか想定できていない今の段階では、火をつけるのが可能なのは、あの時デッキにいなかった亀田さん、蟹江さんそして叶才三を名乗る老人三人のみ・・・) File:228

コナンは途中でもあくまで亀田、蟹江、叶才三の3人にしか火をつけるのは無理だと考えている。

「焼死体が左腕につけていた時点」というセリフからも、発見した時点からそう推理していたということがわかるが、「蟹江さんは容疑者から外しました」なので、コナンは亀田が犯人で蟹江が焼死体と考えていたことになる。

(もし犯人が蟹江さんでこの古川大の正体も蟹江さんだとしたら・・・)(ほとんどのつじつまは合うけど・・・)(納得いかねーんだよな・・・)(この焼死体がつけている時計の事が・・・) File:229

犯人が蟹江で、古川大も蟹江ならほとんどの辻褄は合うとも言っているが、やはり焼死体の時計が気になっている。つまり、その結論には納得がいっていない。

まぁ、ここの推理を突っ込むと、「右腕用の時計を、焼死体が左腕につけていた時点で~」とコナンは言っているが、たとえ本人であろうと、他人に時計をつけさせようとしたら左右つけ間違うということは普通にある。現実視点だとこれは全く根拠になっていないのだが…

それに、亀田が蟹江を殺害して時計をゆるめただけなら左右が違うことはありえない。それなのに左右が違ったということは、犯人が亀田で遺体が蟹江というパターンはないということ。左右間違うのは一度時計を外して付け直す場合。

つまり、遺体は蟹江以外の誰か、あくまで叶才三をフェイクとすると亀田しかいない。自分の時計をつけ間違うことはないというルールを前提にすると、犯人が蟹江の可能性も消える。そうすると、犯人は亀田、蟹江、叶才三を除く他の誰かしか残らない。

これはコナンのミスなのか、読者に向けたヒントなのか。ただ、時計が左右違うことに気づき、本人なら間違えないと、ちょっと無理な論理で結論付けるのは相当難しいとは思われる。

二人の凡ミス

「オレが叶捜しをあきらめてレストランに戻った時、まだ蟹江さんはいたんだから・・・」

服部は小五郎と会話をしている時に、ビニールがかけられて紐で縛られた木箱について話を聞いている。当然、銃殺された遺体は既にその中に入っていたと考えられ、その時に蟹江はまだ生きていたとなれば、犯人が蟹江で、殺害されたのは最初に姿を消したきりずっと姿を見せない亀田だと考えるのも無理はない。

「自動発火装置みたいな物もなかったし・・・」

元はと言えばこれが全ての元凶。「現場にいた人物に犯行は無理」と早々と決め付けて犯人と被害者が亀田と蟹江の二人しかいないと絞ってしまったために推理ミスをしてしまった。

普段の二人であれば、何かアリバイを崩すトリックがあるのではないかと疑ってかかるのだが、この話では安易にその時の状況だけで判断してしまっている。

しかし、時間差を作り上げた仕掛けはタバコと爆竹を使ったごく簡単なものあった。後にコナンは船に残った焦げ跡を見て、それがすぐにタバコと爆竹だと暴く。本来ならそっちの方がよほど難しく、焦げ跡を見つけてからそれが何を意味するのかを考える。

ここは、最初にコナンと服部が推理ミスをするという筋書きを決めた、あるいは、後からそのシナリオを入れたために、ありえないような凡ミスというちょっと無理のある展開になってしまったと思われる。まぁ、先述したようにここの山場のシーンはあらかじめ決めていたのであろう。

この推理ミスによって話の難易度は上がっている。コナンと服部が「自動発火装置はなかった」という証拠を元に犯人を絞り込んでいるのだから、読者はそれを前提に考えがち。

しかし、この推理はいとも簡単に崩され、振り出しに戻ってしまう。迷惑な話しであるが、二人が読者をミスリードしている。まぁ、何度も言うように、そのミスリードのために犯人は服部を呼んだという知能犯なのであるが…

推理勝負の勝敗

服部:(あるはずや!)(オレの推理が合うとったら、どっか人の目が届かん所にあの人が隠れてるはず・・・)「ん?」(ま、まさか・・・)

・・・

服部:(ち、違てる!!)(オレも工藤も間違うてるやないか!!)(ほんなら誰や?)(誰なんや犯人は!?) File:227

服部は蟹江が縄ハシゴにくくりつけられているのを見つけ、結果的に蟹江は犯人でも被害者でもなかったので、二人の推理は外れていた。

コナンは犯人、焼死体ともにはずれ。服部は焼死体が亀田であること、犯人が蟹江の服を亀田に着せたところまでは正解であるので、一見服部のほうが正解に近いようにも思えるが、犯人の思惑に見事に嵌ってしまっている。

となれば、互角なのかなというところであるが、犯人の仕掛けたフェイクを見抜いたコナンの方が一方上と言えるのかもしれない。

初期の推理勝負でははっきりと新一と服部の優劣が示されたが、その後はライバル、相棒として互角に描かれているようで、時々コナン(新一)の方が上であることを示す描写がある。まぁ、コナンが情報を多く持っていたりという時も多いのだが。

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更新日:2015-10-24
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