ヘル・エンジェルの異名
灰原:「知りたくなった・・・じゃダメかしら?」「私の両親が本当に組織で噂されていたような人物かどうかを・・・」「あの明かるい、あなたのお母さんに会ったら無性にね・・・」「でも、どうやらマッドサイエンティストの父はともかく・・・・・・」「母は無口で陰気で何を考えているかわからない人だったみたいね・・・」
コナン:「バーロー・・・ただの噂だろ?勝ってに決めつけてんじゃ・・・」
灰原:「知ってる?私の母が組織で何て呼ばれてたか・・・」「ヘルエンジェル・・・」「地獄に落ちた天使・・・」 File:424
灰原の母、宮野エレーナは組織内で「ヘル・エンジェル」(地獄に落ちた天使)と呼ばれていた。
ミステリートレイン
安室:「さすがヘル・エンジェルの娘さんだ・・・」「よく似てらっしゃる・・・」「初めまして・・・」「バーボン・・・」「これが僕のコードネームです・・・」 File:823
ミステリートレインでは、バーボンも「ヘル・エンジェルの娘」と、灰原の母(エレーナ)のことを「ヘル・エンジェル」の名前で呼んだ。
エレーナの印象
コナン:「学会から追放されたマッドサイエンティストを知ってんのか!?」
博士:「マッドサイエンティスト?」「気さくで感じのいい男じゃったぞ・・・ワシの発明品も気に入ってくれとったし・・・」「無口で何を考えているかわからなかったのは、彼の奥さんの方じゃったよ・・・」「確か名前はエレーナとか言ったかのォ・・・」 File:398
今井:「奥さんは奥さんで、ずーっと黙ってるから言葉が通じないのかと思ったら、娘さんと日本語で放していたし・・・」「旦那は絶えず窓の外を気にしていたし・・・」「そーいえばあの時、この家の前にずっと車が停まってたな・・・」 File:423
父である宮野厚司の気さくで感じの良い性格とは対照的に、母のエレーナは無口で何を考えているかわからない、暗い性格だったよう。
灰原は母が本当に組織で噂されていた通りか気に掛けていたが、話を聞いて、「どうやら無口で陰気で何を考えているかわからない人だったみたいね」と納得する。
しかし、これは「地獄に落ちた天使」のイメージと根暗な性格が一致しているというだけの先入観に過ぎない。
ヘルエンジェルとは
シンプルに解釈すれば、英語で「ヘルエンジェル」の「ヘル」(地獄)と「エンジェル」(天使)の二つに別れ、灰原はこれを「地獄に落ちた天使」と訳している。
「サタン」「デビル」「デーモン」などの直接的な表現ではなくて、あえて反対の意味になる「エンジェル」の否定をすることで悪魔的な意味を表している。
また、「エンジェル」だけであれば、そのまま天使のような優しい人間ということになるが、その天使が地獄に落ちた。
天使が地獄に落ちたのであって、元は”天使”ということ。わざわざ段階を踏んだ表現をしていることから、最初から悪魔のような人格をであったために「ヘル・エンジェル」と呼ばれたわけではないと考えられる。
何らかのきっかけがあり、「天使」が「墜天使」になった──
念のため注意しておくべき点は、「地獄に落ちた天使」は灰原が勝手にそういう意味で捉えているだけかもしれないというところ。
組織内でヘルエンジェルと呼ばれていたことは確かであるが、「地獄に落ちた天使」文字通りの意味で呼ばれていたかどうかはわからない。また、もしそう呼ばれていたとしても、”裏”の意味がある可能性もある。
いくつかの意味
まず前提として、「ヘル・エンジェル」の名前が登場した時に、「地獄に落ちた天使」という呼び名と、噂通りの陰気で何を考えているかわからない根暗な性格との情報から、エレーナが所謂「悪役」なのではないか?と読者に思わせている。
この場合、「ヘル・エンジェル(地獄に落ちた天使)」の意味は文字通り、エレーナが悪魔的な人格であった(何らかのきっかけで豹変した)ためにそう呼ばれたということなる。
本当に噂通りなのか
先述したように、灰原は父が「マッド・サイエンティスト」、母が「ヘル・エンジェル」と呼ばれていたことから、両親がどんな人物であったかどうかに関心を持っていたが、母については噂通りの人物だと考えた。
しかし、灰原はエレーナが根暗な性格であったことを聞いただけで、陰険で何を考えているか分からない=「地獄に落ちた天使」は真実と結び付けただけ。だが、実際はエレーナが「悪い人物であった」と判断できる箇所はない。
暗い性格だからといって悪魔のような性格というわけではない。暗くて優しい人はたくさんいる。
コナンの考え
コナン:「バーロー・・・ただの噂だろ?勝ってに決めつけてんじゃ・・・」 File:425
灰原は自虐的に物事を悪い方向へと考えてしまう性格であるが、コナンは勝手に思い込まないよう説得しようとする。
これは灰原の勝手な妄想⇒その通り。表向き悪そうな名前⇒だけどその根拠はない⇒そのまま悪い奴でした── ではなくて、普通なら逆の”オチ”となるフラグと考えられる。
エレーナのテープ
コナン:(多分死期を悟って灰原の姉さんに託したんだ・・・)(成人するまでの娘への言葉を・・・)(このカセットテープに込めて・・・)(託された姉さんは監視が厳しくて渡せなかったけど・・・)(昔やったイタズラの事を思い出して、あのデザイン事務所のトイレでこっそり渡すつもりだったってわけか・・・)(よかったな灰原・・・)(おまえの母さんは正真正銘のエンジェルだぜ・・・) File:425
灰原の母は本当にイメージ通りの悪い人なのか?という疑問に対して、そうとも限らないという一つの根拠を提示している。
コナンは残されたテープの内容から、「おまえの母さんは正真正銘のエンジェルだぜ」と言っている。テープを残したのがエレーナの人格だったとすれば、灰原のことを温かく見守ってくれていた優しい母。
そして、このことから、エレーナが元から悪魔のような非道な性格であったために「ヘル・エンジェル」と名づけられ、呼ばれていたわけではないこともわかる。
では、このテープを残した後に何らかきっかけで悪魔に心を売って豹変してしまったのか──
後付けを考えれば理論的にはその可能性を否定できなくはないが、後に説明する「ヘル・エンジェル」と呼ばれたきっかけやその本来の意味までをきちんと考えた上で繋げていけば、その確度は低いのでは?と、この時点でも推測はすることができる。
また、宮野夫婦が組織で研究を続ける、何か特別な意図や理由があるのではないか?(悪い研究目的ではない)というのも、少年漫画としてありそうな展開として考慮に入れておくべきところ。
ミステリートレイン
エレーナ:(実はお母さんね・・・)(今、とても怖ろしい薬を作ってるの・・・)(ラボの仲間は夢のような薬って浮かれてるけど・・・)(父さんと母さんは願いを込めてこう呼んでるわ・・・)(シルバーブレット・・・)(銀の弾丸ってね!)(でもその薬を完成させるには、父さんと母さんはあなた達とお別れしなきゃいけないの・・・わかってちょうだいね・・・志保・・・) File:821
上記の想定に対して新たにわかった事実が、ミステリーとレインで明かされたエレーナが残したテープの内容の一部。これが宮野夫婦が悪に染まったわけではなく、研究に手を貸しながらも何か意図があるのでは?という考えの裏付けになる。危険な薬であることを自覚はしているようであるが…
宮野夫婦は薬に対して浮かれているラボの仲間とは別の認識を持ち、それでも願いを込めて「シルバーブレット」と名づけ、薬の研究をしていた。
このシルバーブレットがどういう意味で使われているのかはわからないが、コナンの世界では「狼(組織)を貫く弾丸」として、ベルモットは新一に期待し、組織は赤井を恐れている。
もし共通の意味の「シルバーブレット」であれば、宮野夫婦の研究は最終的に組織を貫く弾丸となると考えられる。あるいは、文字通り難病を治療する特効薬。
また、薬を完成させるために「お別れしなければならない」と、テープを残した時には願いを込めて開発をしていたわけで、急に悪に豹変したわけではないこともわかる。
安室の過去
ヘル・エンジェル:(ダメって言ったでしょ?)(もうケンカしちゃ・・・)
安室:(だってー・・・)
ヘル・エンジェル:(次に怪我して来てももう手当てできないよ・・・)(先生・・・ 遠くに行っちゃうから・・・)(バイバイだね・・・)(零君・・・) File:889
エレーナは幼少期の安室の怪我の手当てをしていた。これもエレーナの優しい性格が伺える描写。
極端なことを言えば、「エレーナは自分の娘や子供だけに甘く、その他の人達には冷たく残酷な人であった」とか、「エレーナは嘘の人格でテープを残した」などと後付けでどうにでも出来てしまうが、ありえなくはない可能性の全てを考えるのではなくて、元々数少ないエレーナの描写はシンプルに土台にして、あくまで論理的に考える。
決して薬を悪用するために研究しているのではなさそうであり、灰原にテープを残し、安室の手当てをした伏線から、「実はエレーナが一部の人に優しく本当は冷酷な人間である」と考えられるような根拠はない。
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