赤井襲撃(前編)
ジン:「フン・・・今はお前を立てて手は出さねぇでおこう・・・」
ウオッカ:「今は・・・ですかい?」
ジン:「気に食わねぇんだよ・・・」「あの赤井がこうも易々とキールを奪い返される策を立てていたとは・・・」「何かまだ裏があるんじゃねぇかとな・・・」
ウオッカ:「そういえば赤井・・・やり損ねちゃいましたねぇ・・・」
ジン:「ああ・・・奴ならキールを奪い返す際に必ず絡んで来ると踏んでいたんだが・・・」
ウオッカ:「所詮、それだけの男だったって事じゃないんですかい?」
ジン:「・・・・・・」 File:605
キール:「ええそうです・・・」「この仕事、もう精神的に無理なんで降りたいんです・・・」「本当に申し訳ありません・・・」「では・・・」「ふう・・・」
ジン:「誰だ?電話の相手は・・・」
キール:「バカね・・・」「TV局の人事部長よ!」「こうなった以上、アナウンサーは続けられないから辞めるって言ったのよ・・・」「ヘタに捜されても困るしね・・・」「それに、私が何を話していたかなんて組織に筒抜けのはずよ・・・」「私にはいくつもの盗聴器と発信機を付けられていて・・・」「たえず見張りが2~3人付いているんだもの・・・」「それで?未だにあの方に疑われ続けている不自由な私に・・・」「何か用かしら?」
ジン:「フン・・・その疑い深いあの方からの命令を伝えに来た・・・」「ある人物を消し・・・」「お前の事を信じさせてくれと・・・」
キール:「あら・・・」「誰かしら・・・」
ジン:「FBI捜査官・・・」「赤井秀一・・・」 File:606
ジン:「FBI捜査官・・・」「赤井秀一・・・」「俺もそうだが、あの方も不審に思っておられるんだよ・・・」「いとも簡単にお前をFBIから奪還できた事を・・・」「ならばそのFBIの切り札である赤井秀一を葬り、自らの身の潔白を証明してみせろとのお達しだ・・・」「どうしたキール・・・まさかできねぇ訳でもあるんじゃねぇだろーな?」
キール:「訳も何も・・・」「ジン、あなたでさえ手を焼いている赤井を私がどうやって・・・?」「下手にFBIに近づけばまた捕まるわよ?」
ジン:「近づくんじゃねぇ・・・」「奴をこっちの射程距離に誘い込むんだよ・・・」「組織に戻ったが、ヘマをやらかしてFBIに捕まった厄介者扱い・・・」「居場所がないから組織を抜け、国外に逃げる手引きをしてくれとでも言ってな・・・」「もちろん、呼び出すのは奴1人・・・」「それ相応の情報を提供すると言えば必ず食いつく・・・」
キール:「なるほど・・・そしてのこのこやって来た彼に、あなた達が寄ってたかって弾丸をぶち込むのね?」
ジン:「いや、殺るのはお前1人でだ・・・」
キール:「え?」
ジン:「奴は人一倍鼻が利く・・・」「我々の気配に気づけば罠だと見破り、踵を返されちまうからな・・・」「我々は奴の弾が届かない遠くから事の成り行きを拝ませてもらう・・・」「お前に仕込む盗聴器とカメラでな・・・」
キール:「・・・・・・」「わかったわ・・・言う通りにするから少し時間ををくれる?」
ジン:「いや・・・」「今、この場で奴を呼び出せ!」「できなければお前に死に神を呼ぶまでだ・・・」
キール:「ちょ、ちょっと待ってよ・・・」「まさか本気で私がFBIに言いくるめられたなんて思ってないでしょうね?」
ジン:「それもあるが・・・仲間のつかんだ情報によると、FBIはまだ例の病院に留まっていて、どういうわけだか捜査官の1人がある事件に巻き込まれ、FBIの目は今そっちに向いている・・・」「この機を逃すわけにはいかねぇな・・・」 File:607
キール:<私よ・・・>「水無怜奈・・・」「今、大丈夫?周りに人いない?」
赤井:「・・・ああ・・・俺1人だが・・・」
キール:<驚いたでしょ?組織に戻った私からこんなに早く連絡があるなんて・・・>
赤井:<どういう事か説明しろ!>
キール:「実は組織に居づらくなってて・・・」「抜けたいから高飛びする手助けをして欲しいの・・・」<もちろんFBIが欲しがっている情報は提供するから・・・><今から2人きりで会えないかしら?>
赤井:「ああ・・・そっちも1人なら構わんが・・・」
キール:「じゃあ時間と場所は・・・」「後ほど・・・メールで・・・」
赤井:「ああ・・・」
ジェイムズ:「電話の相手は水無怜奈かね?」
赤井:「はい・・・」「これから2人きりで会わないかと言って来ました・・・」
ジェイムズ:「2人きりという事は罠かもしれん・・・行かない方が賢明だが・・・」
赤井:「ええ・・・ですが・・・罠だとしたら私が行かなければ彼女は十中八九殺される・・・」「大丈夫ですよ・・・我ながら勘が働く方だと自負していますし、彼女もCIA端くれ・・・」「うまく切り抜ける策が何かあるんでしょう・・・」
ジェイムズ:「と、とにかくジョディ君を呼び出して、FBIとしての対応を・・・」
ジェイムズ:「ど、どうしたんだね?」 File:607
赤井:「今夜19時・・・」「来葉峠の7つ目の左カーブを抜けた先か・・・」「この時間、あの峠なら車の通りも少なく、密会するには絶好の場所というわけか・・・」
ジェイムズ:「し、しかし本当に大丈夫かね?」
赤井:「ええ・・・私を信じてください・・・」「もちろん彼女も・・・」「では、後の事は任せましたから・・・」
ジェイムズ:「あ、うん・・・」
キール:「あら、どうしたの?」「逆方向から来るなんて・・・」
赤井:「先回りして色々探らせてもらったよ・・・」
キール:「そう・・・それで?ちゃんと得られたのかしら?」「私が1人で来たっていう・・・確証は・・・」
赤井:「ああ・・・」<・・・のようだな・・・>
赤井:(ポルシェ356A・・・)(フン・・・そういう事か・・・)
File:608
ジン:<どうしたキール・・・><早く止めを刺せ!>
キール:「でも、肺を撃ち抜いたから放っておいても後30分程度で・・・」
ジン:<頭だ・・・>
ジン:「頭に弾丸をぶち込め!」「それで赤井の息の根は・・・」「完全に停止する・・・」
キール:「・・・・・・」「了解・・・」
赤井:「フン・・・」「まさかここまでとはな・・・」
キール:「私も驚いたわ・・・」「こんなにうまく行くなんて・・・」
ジン:「警察か・・・」
ウオッカ:「どうやら近くで事故があったらしいですぜ・・・」
ジン:<キール!後始末してズラかれ!>
キール:「了解・・・」(悪く・・・思わないでね・・・)
警察A:「な、なに!?」「は、早く署に連絡だ!!」警察B:「は、はい!」 File:609
赤井襲撃(後編)
ジョディ:「ええっ!?」「秀一が水無怜奈に呼び出されて会いに行った!?」
ジェイムズ:「ああ・・・君が出て行った後に彼女から赤井君に電話があったんだ・・・」「2人きりで会おうと・・・」
ジョディ:「2人きりって・・・」「そんなの罠に決まってるわ!!」「どうして止めなかったんですか!?」
ジェイムズ:「いや、止めたんだが・・・」「行かなければ彼女の身が危ないと言って強引に・・・」「まぁ、赤井君の事だ・・・」「心配するに及ばんよ・・・」
FBIモブ:「あ、あの・・・」「その2人が落ち合う場所って来葉峠でしたよね?」
ジェイムズ:「あ、ああ・・・」
FBIモブ:「今TVのニュースでやってましたけど・・・」「来葉峠で車が1台炎上していて・・・」「中から焼死体が発見されたって・・・」
ジョディ:「な、」ジェイムズ:「何だと!?」
TV:(炎上したのは黒いシボレー・・・)(中に乗っていたのは20代から30代の男性で・・・)(発見したのは、偶然 別の事故現場にパトカーで向っていた警察官2名!)(その警察官の話によると、突然目の前で車が爆発したらしく・・・)(遺体に拳銃で撃たれた跡が残っている事から・・・)(警察では殺人事件と見て捜査を続け・・・)(車のナンバーや、かろうじて焼け残った遺体の右手から身元の割り出しを・・・) File:609
コナン:「あ、ジョディ先生・・・」
ジョディ:「なに?」
コナン:「あ・・・」「がんばってね!」
ジョディ:「ええ・・・」
コナン:「・・・・・・」
歩美:「ホラ、コナン君!」元太:「何してんだよ!?」光彦:「遅刻しちゃいますよ!!」
コナン:「おう!」 File:609
ジェイムズ:「その様子だと・・・」「やはり遺体は赤井君だったか・・・」「かといって、水無怜奈を責めるわけにもいくまい・・・そうしなければ彼女の方が殺されていただろうし・・・」「赤井君にそう話していたそうじゃないか・・・」「「いかなる場合でもCIAの任務を優先させるから・・・FBIに不都合な事があっても悪く思わないでね・・・」───とな・・・」
ジェイムズ:「だがこれで・・・組織の楔を打ち込む事はできた・・・」「決して外れる事のない・・・」「鋼の楔を・・・」「その代償はあまりにも・・・」「あまりにも大き過ぎたがな・・・」 File:609
瑛祐:「あっそうだ!」「聞いてます?」「FBIで何かあったみたいなんですけど・・・」
コナン:「何かって?」
瑛祐:「ウーン・・・」「あの雰囲気は誰かが亡くなったような・・・」「でも聞かされてないんなら・・・」「きっと大丈夫ですね・・・」
コナン:「・・・・・・」(ああ・・・大丈夫さ・・・) File:621
キールを取り戻した組織だが、あまりに易々と奪還できたことに裏があるのではないかと、ジンとあの方は疑いを持つ。そして、疑い深いあの方はキールに赤井の殺害を命令する。
キールは来葉峠に赤井を呼び寄せ、肺と頭を撃ちぬき爆弾でシボレーごと爆破、赤井を抹殺した。その結果、キールはなんとか組織からの信用を取り戻す。FBIは赤井を代償に組織に楔を打ち込む事に成功した。
コナンは瑛祐から「FBIの誰かが亡くなった」との情報を得るが、「大丈夫」との確信があるようである。
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